2007年1月アーカイブ

#028 「衝撃のアナウンス (1)」

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 車内アナウンス問題、再びの論考です。今回は発声法ではなく、内容について。学生の頃、山手線外回りに乗っていたときのこと。原宿を出た電車内に響くアナウンス。「つぎはぁ…新宿、新宿です」

 ん??次は代々木じゃないのかな。そう思う内にも電車は代々木のホームに滑り込みます。何事もなく発車した電車。次は新宿。車両がマイクを手にして車内放送のスイッチがONになったことが、スピーカーの気配で分かります。そして衝撃のアナウンス。
「次も…新宿、新宿ぅです」

 なんだそりゃ?車内に乗り合わせた皆さんも、呆気にとられています。「次も、って言ったよね?」とヒソヒソ…連れと顔を見合わせる女性、私の前に立っていた若いおにいさん(当時は私もそうでしたが)は、「ぷっ」と肩で笑いました。

 そうしているうちに電車はホンモノの新宿駅に。どっとホームに降りてゆく乗客。きっとホームで待っていた人たちの目には、妙にニヤニヤした、妙に和やかな集団に見えたことでしょう。衝撃のアナウンスも、思いがけずほんわかした空気をもたらしたとすれば、悪くないかも、と思い直しました。


#027 「アナウンス」

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  最初にお断りいたします。私は「アナウンサー」ではありません。もともとは報道局の記者です。ゆえに、アナウンス技術うんぬんを語れる立場は無いのです。そんな私が、この場で論じるのは正真正銘の「アナウンス」。はい。乗りものの中でのアナウンスです。これならいいでしょう、いいことにします。
 
 電車内のアナウンスですが、皆さん気になりませんか? あの「声質」が。なぜ、おしなべてあの無機的な、平べったい、口先だけで出す、独特の声になっていくのかが。文字で説明するのは非常に困難なので、ちょっと声に出してみます。
「まもなくぅ…え、新橋、新橋ぃです」。という声です…(やっぱり無理だ。私の声マネを聞きに来て欲しい)。あれ、絶対地声じゃないですよね。あれが地声だったらたいへん。「ちょっとぉ、お醤油、とってくださいぃ」みたいな何気ない一言が、ものすごく何気あるフレーズに転化します。

あの「車掌話法」って、どこかで必ず習得するものなんでしょうか?あるいは、あのしゃべり方・声質だとマイクに乗りやすく、車内で聞き取りやすいとか。私の乗る限り、「まろやか」「ソフト」「腹から出ている」といった車内アナウンスの声は殆ど聞いたコトがありません。どこかにテノール歌手・秋川雅史さんのようなアナウンスを聞かせる車掌はいるのか。広い日本、ひょっとしたらいるかも知れませんが…。


#026 「死語? その2」

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  先日、電車の網について「乗りもノート」で取り上げました。きょうの写真も、棚を写した1枚です。



  写真をよーくご覧下さい。電車ではありません。飛行機です。でも、頭上の棚がなんかヘンですね。そう、飛行機の荷物棚なのに、フタがない!…電車の網棚と同様の造りです。たったそれだけのことですが、棚のほうに力点を置いてこの写真を眺めると、飛行機というよりも…「窓がやたら小さなバス」という風情も感じられます。不思議です。

  この機体は、YS-11。昨秋に引退した日本が誇る旅客機です。しかし私が不思議に思うのは、この荷物棚、旋回したときに荷物はどうなるんでしょう?落ちてこないの?

  離陸直後や着陸の手前など、空港周辺で旋回すると、結構な角度がつきますよね。左に旋回すると右の棚からドドーっと、右へ曲がれば左の棚からダダーっと。そんなことは無かったんでしょうか。だとしたら、たいへんなことです。

 実際に搭乗したことのない私は、確認する術をもはや持ち合わせておりません


#025 「ドア」

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 閉まるドアにご注意下さい…。一日何回も聞くフレーズです。会社や学校への行き帰り、車内にいても聞こえますからね。先日、「おもいッきりテレビ」「きょうは何の日」のコーナーでのこと。「上野駅に発車ベルが取り付けられた日」という放送がありました。ジリリリリ…というあの音に始まり、最近の「発車メロディ」に至るまで、発車にまつわる音の歴史を繙いていました。

慌てさせすぎては事故になる。かといってダラダラと緩んだら列車は遅れる。車掌がドアを閉めるタイミングは難しいものでしょう。前述の「おもいッきり」では、駆け込もうとしてホームとドアの隙間に落ちてしまう男性の映像が流れていました。映像ではありましたが、私は初めて目にしました。ホントにストンと落っこちちゃうんです。最近は、人員削減=合理化と安全性の双方を目指して、ホームにもドアがある路線が増えました。これは一つのアイディアでしょう。

しかし。黙過できない問題もあります。ホームドアがあると、ホームから線路が見えない。これは「物狂おしい」乗りもの好きもいるはず。せっかくお目当ての車両の写真を撮ろうと思っても、延々と続く柱&ガラス&柱&ガラス…。ほんと、ドアにはご注意ください…。


#024 「乗りもの天国・ふたたび」

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 銀座の中央通り、8丁目東側の標識を以前紹介しました(#015 12月22日)。その名も「天国前」地上の楽園…ではなく天ぷら屋さんの前なんですが。ハイヤーや観光バス、周辺の高級店に乗り付けたと思しき高級な自家用車など、「乗りもの天国」なんですね。

 その後。休日に銀座を歩いてみると…その写真がきょう掲載の一枚です。
乗りもの天国なのに車道に乗りものが一台も無い!のであります。そう。土日・祝日は「歩行者天国」が開催されるので、こんな状況なのです。

 気持ちのいい空のもとの目抜き通りゆえ、どんどん真ん中を突き進めばいいのですが。私はどうも、ど真ん中を闊歩するのに躊躇いを覚えがち。歩行者天国に出くわしても結局歩道を歩く性分の持ち主です。

 ということで、「天国前」は週末も休日も「天国前」でありました。


#023 「立ち売り」

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  鉄道での旅の楽しみ、「駅弁」。しかし最近は駅で買うよりもデパ地下で、という方が多いのではないでしょうか。催事の定番と言える駅弁大会は、この年末年始もあちこちの店で行われています。「リアルタイム」特集でも木曜日に放送いたしました。

  写真は、福岡県の
  折尾駅
のようすです。
  会社の後輩が
  帰省の折に撮ったもの。

ここの目玉は全国的にもファンの多い「かしわめし」。おじさんがほぼ毎日、箱を首から提げてホーム上を売り歩くそうです。

  かしわめしー

っと声を上げて。いいですねえ。ちょっとした駅なら、「立ち売り」はどこでも見かけた光景です。しかしいまや全国でも数えるほどの駅でしか立ち売りは残っていません。

 私の地元、新潟の新津駅でも、在来線の特急・急行が頻繁に行き交っていた時代は、ホームに活気が溢れていました。立ち売りのおじさんを囲む人だかりも、その活気の源のひとつ。長距離をゆく列車の縮減、コンビニやファストフードの伸長などで駅での立ち売りは、殆ど見られなくなりました。帰省するときに見る限りでは、もう何年もその姿を見ていません。駅も無粋な橋上駅舎に建て替えられ、往時の風情は風前の灯火。

  短い停車時間に慌ただしくやりとりするあの何とも言えないぬくもりは、駅のホームならでは。旧さと懐かしさも、味わいを深める調味料なんですけどねえ
 


#022 「死語?」

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  言葉と実態がかけ離れていく。そしていつしか消えゆくのは「言葉」の宿命。乗りもの関連での「絶滅危惧語」の一つが「棚」です。…ええ。私の独断です。

  座席の上にずずーっと伸びる荷物棚。かつては本当に「網」でした。深緑色の粗い網が、枠に取り付けられていたものです。年季が入ってくると、網が重みで緩く弛んできます。トロリーケースやアタッシェ、よりも「柳行李」「風呂敷包み」が似合う棚でした。
 
写真を見てください。


昨今の通勤電車はスチールパイプ製が幅を利かせています。これはもはや「網」ではありません。むしろ見た目は「柵」に近い。この前段階として「網状のスチール」っていうのもありましたが、最近はめっきり少なくなりました。


もう一つ。
これは新幹線300系の「網
もはや「」の名残は殆ど見受けられません。ほぼ「」です。点々と残るスリットは、恐らく「忘れ物防止」のためでしょう。棚の下から見上げたとき、小さな荷物の有無がわかるように、という配慮。このスリットゆえに「(1)網→(2)柵→(3)板」の(2)と(3)のあいだ、と位置づけられます。

  そもそも乗客が荷物を載せる「棚」はこの位置にしかありません。それを鑑みると、「網棚」は「柵棚」「板棚」などと呼ばれる時期も無いまま死語となり、いずれ「棚」という呼び名に収斂していくのではいでしょうか。推論です


#021 「ひじ掛け」

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 お正月休みで帰省した方も多いでしょう。そんなとき。満席の車内や機内でも「せめぎあい」は待ち受けています。そう、「ひじ掛け」をめぐる問題です。


写真は飛行機のひじ掛け。『リアルタイム』の鳥羽アナウンサーが出張の帰りに撮影してくれました。

いちばん窓側といちばん通路側のひじ掛け、これは問題なし
しかし隣席との境界にあるひじ掛け、この帰属はどちらの席なのかじつに悩ましいのです。


 皆さんもありましょう?
3人/4人掛けの内側の席で遠慮していたら両サイドとも奪われたこと。
…あ、無いですか。窓側でも通路側でもない座席で慎ましくやっていると、そうなっちゃうこと、私にはよくあります。日本では各地の市町村で、年末に行う綱引きで市町村の境界線を移動させる、という催しが行われます。あれと同様。「力があって遠慮がない」、これがひじ掛け獲得のための条件であります。

 よって、出発前に搭乗券や指定席券のアルファベットを見るや、ささやかなリラックスのための凄絶な領土紛争に思いを馳せてしまうのです。着席したらば、横並びの人々の性格を読みながら、自分がどっち側のひじ掛けを使用すべきかを熟考…。「力がなくて遠慮はある」小心な私は、隣席が空席であることを願うのが通例です。


#020 「地図」

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 三が日も明けて、街は動き始めました。乗りもののダイヤも平日モードに殆ど復帰。きょうからお仕事の皆さん!ネジを巻き直して今年も頑張りましょう!(←自分への呼びかけです、悪しからず)。

 さていささか旧聞ではありますが、クリスマスプレゼントについて。クリスマスイブを前にした日、スタジオから自席に戻ると、くるくると巻かれた大きな紙が。スポーツを担当するスタッフWくんからのメモ付きです。「メリークリスマス」と一言。

 帰宅して広げると、それは東京都心部の地下鉄乗り換えマップ。ホームやコンコースに貼りだされている、アレです。もちろん「剥がしてきた」わけではありません。ちゃんと売っているんですね。上質紙の香りがつーんと来る紙を床に広げ、つぶさに「検証」してみると。




 美点1乗り換え駅の表現がリアル
「A線とB線のホームが、どういう感じでくっついているかが実態に即している」のです。例えば永田町半蔵門線から有楽町線に乗り換えるには、前のほうに乗ると乗り換えが近い、とか。
 美点2地上の地図リアル
模式化されたものではありません。きっちり実測図です。ゆえに、駅間の距離や、目的地までの駅からの距離も正確。
 美点3乗り換え案内も詳細。
1を保管するデータが欄外に

 つまり「リアル」地図好きのニーズにも応えるマップであります。何事も「リアル」っていいでしょ。…「リアルタイム」っていい番組名ですもん。ねえ。


#019 「謹賀新年」

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あけましておめでとうございます。ことしも「乗りもノート」をご愛読、宜しくお願い申し上げます。

  
ということで年始の初回は「参拝系」とでも言うべき駅舎のお話です。

 最初の写真は太宰府の駅舎西鉄太宰府線の終着駅です。天満宮を模した造りでなかなかいい感じ。やっぱり門前町、寺社町の駅はこうでなくちゃ、と思いますよね。改札を出て右に進めば、名物「梅が枝餅」のちょっと香ばしい匂いがぷうんと漂う楽しい参道が続きます。

 こういう造りの名物駅はかつてあちこちにありました。旧長野駅は、大きな三角屋根を載せた「仏閣型」の駅舎でした。善光寺と間違えて手を合わせた人がいる!という噂もあるほど。
しかし残念ながら長野新幹線の開業に合わせて地域性を殆ど感じない橋上駅舎になってしまいました。多数の乗客をさばくには現在の駅舎が効率的なのでしょうが、実に残念

 いっぽう出雲の国、旧大社駅もじつに趣深い造りの立派な駅舎。街のランドマークに相応しい重厚な構えです。しかしこちらは路線そのものが廃止されたようで。保存・活用されているのがせめてもの救いです。

 もう一枚の写真は太宰府天満宮。毎年200万人もの参拝客が押し寄せるお宮です。
  
言わずと知れた菅原の道真公を祀った社殿の前には、伝説の「飛梅」が。左遷された道真公が

 「東風ふかば
   にほひおこせよ
         梅の花
  あるじなしとて
      春な忘れそ


と詠んだところ、主を追って京都から飛んできたという(!)梅の木です。境内も駅周辺も、今頃はたいへんな賑わいでしょう。

  新しい年、読者の皆さまにとっても素晴らしい一年になりますように。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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