#022 「死語?」
言葉と実態がかけ離れていく。そしていつしか消えゆくのは「言葉」の宿命。乗りもの関連での「絶滅危惧語」の一つが「網棚」です。…ええ。私の独断です。
座席の上にずずーっと伸びる荷物棚。かつては本当に「網」でした。深緑色の粗い網が、枠に取り付けられていたものです。年季が入ってくると、網が重みで緩く弛んできます。トロリーケースやアタッシェ、よりも「柳行李」「風呂敷包み」が似合う棚でした。
写真を見てください。
昨今の通勤電車はスチールパイプ製が幅を利かせています。これはもはや「網」ではありません。むしろ見た目は「柵」に近い。この前段階として「網状のスチール」っていうのもありましたが、最近はめっきり少なくなりました。
もう一つ。
これは新幹線300系の「網棚」。
もはや「網」の名残は殆ど見受けられません。ほぼ「板」です。点々と残るスリットは、恐らく「忘れ物防止」のためでしょう。棚の下から見上げたとき、小さな荷物の有無がわかるように、という配慮。このスリットゆえに「(1)網→(2)柵→(3)板」の(2)と(3)のあいだ、と位置づけられます。
そもそも乗客が荷物を載せる「棚」はこの位置にしかありません。それを鑑みると、「網棚」は「柵棚」「板棚」などと呼ばれる時期も無いまま死語となり、いずれ「棚」という呼び名に収斂していくのではいでしょうか。推論です。