2007年10月アーカイブ

#104「こだわり」

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趣味の道というのは、大なり小なりの「こだわり」を伴います。例えば。習い事を初めたと考えてみましょう。最初のうちは教室で勧められる初心者用の道具を使うのが普通です。ところが長じてくると、道具にこだわりはじめます。いわれのある逸品を手にして悦に入る。ここぞというときに使う特別なものを用意する。という塩梅です。

 「乗りもの」の道は、「こだわり」の宝庫です。乗るにしても手に入れるにしても、眺めるにしても…。他とは違う何かに目が向いてしまうのです。たとえそれが、他人から見て「意味不明」であっても。

 我らがリアルタイムのディレクターM君の場合。M君一家は東急田園都市線の沿線に住んでいるのですが、3歳の息子さんには強いこだわりがあるようで。電車に乗ると言えば「半蔵門線の車両じゃなきゃイヤ!」なんだそうです。説明しましょう。東急田園都市線は東京メトロ半蔵門線、東武伊勢崎線との相互乗り入れをしています。3社の車両が同じ線路の上を行き交うわけです。

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 写真はその「半蔵門線」の車両。でもホームに待っていると自分の乗る電車がどの社の車両かは、来てみるまで分かりません(マニアを除く)。M君のぼっちゃんは、赤い帯の東急の車両や前面がオレンジ色の東武の車両が来ると、「ちがう!コレじゃないっ!」とワンワン泣き叫び、頑として乗ろうとしないそうです。(ちなみに南武線も好きらしい。ツウ好みです)。急ぎの用事で急行に乗ろうとしたときに、こうやって駄々をこねたら大変ですよねー。でも乗りもの好きにはよーく理解できます。「お、この新幹線は試作バージョンか」「きょうの飛行機は国際線仕様を使ってる。ラッキー」などなど…。 

 しかし考えようによっては「こだわり」の芽生えは趣味の芽生え。いずれこの「乗りもノート」を引き継ぐことが出来るかもしれません。若者や子どもたちの「乗りもの趣味」は衰退との声もちらほら聞かれる昨今。M君がどう辛抱強く令息を育て上げるのか。期待しております!


#103 「コンパクト」

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 先日の『リアルタイム』で、自動車各社のコンパクトカーにかける意気込みを紹介しました。原油高が続き、燃料消費の少ない車が注目を集めています。しかし各社の最新作を見ると、単に小さく燃費がいいだけではありません。「コレ1台で全てOK」という居住性と機能、運転する愉しさ、購買欲をそそるデザインやカラーなど、どこにも死角がないんです。私も駐車スペースが確保出来るなら、こういうコンパクトカーが欲しい…。きっと、本当に購入したら、そっちばかり使うことになるのが目に見えます。

そうしたコンパクトカーの大ヒット作、ホンダの『フィット』がフルモデルチェンジいま日テレのゼロスタ広場に展示されています。

今週金曜日に日本テレビ系で放送するスペシャル番組人類誕生の謎を追え!幻のトーテムポールを求めて 時任三郎が挑む大冒険』のPRを兼ねての展示です。「進化とは、時代や環境、人にフィットすること…」なるほど。

 大きくて豪華、周囲を圧するだけが目的の車はすでに過去の遺物。地球環境にいかに調和していくか、乗りものの世界も日々変化しています。今週金曜の夜、人類のあゆみという大きな流れも考えてみようかしらん。あ、番組HPを見ると『フィット』のプレゼントもあるらしいです。応募したいけど日テレ関係者だし…。無念


#102 「鉄道博物館 冷水器」

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 かつて、冷たい水は何か「ありがたいもの」でした。大きなヤカンに氷を入れた水。町内の行事などで出てくる樽型の大きな冷水ポット。冷蔵庫で冷やした水。ま、いろいろありますが、いずれも「あとから冷やして保管する」という性質のため、「飲みきると後がない」という悲しい宿命を背負っていました。「最初から冷えている」「尽きることなく飲める」そんな冷たい水は、とてもありがたいものだったのです。 

 振り返ると私の通った中学校には、冷水器が何台かありました。足でペダルを踏むと、チョローっと冷たいお水が放物線を描く、床に据え置くタイプと、コップを押し当てると上からジャーッと出てくるタイプ。後者は飲食店でもよく見受けられます。体育の時間のあとの休み時間、部活の終わった放課後など、行列ができたものです。

 
 コンビニもない、ファストフードもない時代に、そういうありがたい冷たい水を好きなだけ飲める場所のひとつが「特急電車の中」でした。

 写真は鉄道博物館に展示されている特急車両「クハ481」の冷水器です。特急や新幹線に備え付けられていたこの冷水器は、何といっても「コップ」に特徴があります。平たくつぶされた耐水紙をぐいっと広げてチョボチョボと水を注ぐ…。衛生上の問題、保守点検の手間、コンビニの普及などでしょうか。めっきり見受けられなくなりましたね。

 でも展示車両の洗面所周辺は、独特の饐えたニオイが往時のまま。懐かしい…。もちろん冷水器は使えませんが。念のため。


#101 「鉄道博物館 栓抜き」

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 鉄道博物館。すごかった。鉄道発祥の地である英国には多くの鉄道博物館、資料館がありますが、今回オープンした鉄道博物館は世界的にも胸を張れる内容と言えましょう。

 で、この「乗りもノート」で最初に紹介するのは「栓抜き」です。何で?と言われるかも知れませんがご容赦を。このブログは「間口を広く」がモットーですので、乗りものファンにしか分からない知識を綴っても…というわけです。万人に開かれたネタを、と思いつつ館内の展示を眺めると、ありました。それが「栓抜き」。

 館内のヒストリーゾーンと呼ばれる広大な屋内展示室には、国鉄の名車たちがぴかぴかに整備されて並んでいます。多くはその車内にも入って、隅々まで眺めることができます。
で、この栓抜きは急行用電車「455系」の先頭車「クモハ455」の車内にあったもの。そうそう。かつて急行用の電車のボックスシートには、こういうテーブルがありました。で、その真ん中には「栓抜き」が。

 子どものころ、この栓抜きでジュースの栓を抜こうと思っても、うまくいかないものでした。引っかけて、上にグイッとこじ開ける。…それだけのことですが、力加減や角度というのが飲み込めない。ヘタをすると開いた瞬間にジョバジョバとこぼしたり…。今ならうまく使える自信がありますが、もはや「栓抜き」を備えた車両に乗ることもなくなりました。旅の友の飲料も、瓶→缶→PETと、その装いを変えています。


 網棚に大きな旅行カバンを乗せ、テーブルにお菓子や飲み物を並べてワイワイ話す、そんな旅の光景が想像されます。ボックスシートは決して広くもなく、快適な座りごこちではありませんが、楽しい時間の演出には長けていたのではその名残が「栓抜き」に感じられました


#100「鉄道博物館」

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 ことし最大の、といっていいぐらいの「オープン」です。乗りもの好きにとっては。おととい14日、さいたま・大宮の鉄道博物館が開館しました。私は開館に先駆けて10月1日の報道公開にて館内を見て参りました。ハッキリ言って「役得」です。

 現地までは電車で行きましたが、博物館の最寄り駅「鉄道博物館駅」(開館に合わせて「大成駅」から改称)は「ニューシャトル」という新交通システム。
小さな箱を6つ連ねたワンマン運転です。大宮駅で乗り換えをしようとホームに立つと、列車は右から入ってきます。で、そのまま進行方向を変えずに左にむけて発車。大宮駅は始発・終着駅なのに、折り返し運転をしないのです。通常の始発・終着駅の場合、お客さんを全員降ろすと、運転士は反対端の運転室に移動、車掌は今まで運転士がいた運転室に移動するのですが。

 これにはワケがありまして。ニューシャトルは東北・上越新幹線の高架線の左右に貼り付くように走っています。上下線の間に新幹線の線路が幅広く走っている。で、上り線を大宮駅に向けて走ってきたニューシャトルは、新幹線の高架の下に潜り込んで、ぐるっとループを描き、反対側に出てくるんですね。ヘアピンカーブしているようなものです。これで、乗務員の場所替えを省いてそのまま下り列車になり、出発すると。

 新潟に帰省するとき、新幹線から見えた小さな電車が、こういう運転形態をとっていること、初めて知りました。百聞は一見に如かず、ですね。…そんなことを思っているうちに、大成駅(いまや鉄道博物館駅)に到着です。
つづきはまた。


#099「土日 その2」

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 去年10月に乗った只見線の話の続きです。只見線は全線単線なので、反対方向からの列車とすれ違うため、駅で「待ち合わせ」をします。この待ち合わせのための停車が結構長いので、列車からホームに降りて、澄んだ空気を吸ってリフレッシュ。…と、ある駅では乗っていた人がほぼ全員、降りると同時にホームの前方へ。カメラを持つ人ばかりです。私もそれに倣って行ってみると、前方の線路から

            「ボォォォォォォッ!」という汽笛が。

        そう。蒸気機関車が旧い客車を引いてやってきました。

 秋の観光シーズン。臨時列車のようです。どうりで、この駅ではホームに所狭しと地域の特産品が並んで販売されています。中でも魅力的だったのが一杯100円の「きのこ汁」。ポリの容器からアツアツの湯気。チョコレート色の旧い客車に持ち込んだお客さんは誰もが満足げでしたよ。このSL列車、この秋は来月3日、4日に運行されるそうです(全席指定席)。

とにかく懐かしさ満点の只見線。乗り通すだけでも楽しめます。ゆったりと流れる景色を愉しむのはもちろん、物思いにふけったり、長いトンネルでは読書したり。ぜひお試しを。


#098「土日」

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 ハッピーマンデーとやらで、3連休が増えました。残念ながら私はその恩恵を享受できないのですが。でもその気になれば土日だけでも結構な旅行が出来るのです。今回はそのお話。
 
 この切符。
 JR東日本が発売している 「土日き
 っぷ」
です。
 JR東日本管内のかなり広い範囲で
 使え、新幹線・特急・急行の自由席
 を含め土日まるまる乗り放題。
 大人は1万8000円。さらに。2日間
 で4回、新幹線や特急の指定席
 も乗ることができます。
 



 私は去年の今ごろ、このきっぷを
 使って壮大な
(というほどでもないで
 すが)旅に出ました。


朝、東北新幹線で郡山へ。磐越西線の快速列車に乗って会津若松到着。

 城下町でお昼を食べて絶景ローカル線として知られる只見線を全線乗り通し、夕方5時過ぎに新潟の小出到着。在来線で越後湯沢まで移動し上越新幹線で帰京しました。ぐるっと反時計回りの旅ですね。どなたか料金を計算してみてください。一つ一つ切符を買うよりは格安のハズですから。(しかも結局土曜日しか使っていませんから、日曜も使ったらもっとモトが取れる可能性大)

 いやー、充実しました。紅葉には早かったのですが山と水と緑。只見川水系の豊かな水の恵みが織りなす光景は素晴らしいの一言でした。
 そして昔懐かしい田畑や木造の民家。只見線は各駅停車で4時間を費やしますが、退屈することなどありません。ボックスシートの窓際に座って、のんびりゆったり。

 当「乗りもノート」のトップページ、タイトルの右の写真がそのときのもの。眉間にシワを寄せていますが、これ、実際の心象とはまったく違います。ホントはリラックスなんです。一人でセルフ撮影するのでどうも「自意識」が微妙に働いて…。


#097 「プチ」

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  東急の蒲田駅です。

 4つの線路が櫛のように突き当たります。一見すると本コラムの#073で紹介した「阪急梅田駅」と同じような構造です、が、規模やサイズは半分以下。銀色の車両が並ぶターミナル!と言うにはもうちょっと。「プチ」ターミナルと言えましょう。

 このホームから発車する路線は2つ(池上線・多摩川線)ですが、いずれも現在は東急の主力路線とは言い難い。少々ローカルな風情の路線です。げんに、行き交う電車はちょっと短い車両の3両編成。大型車両の10両編成が当たり前のような大都市圏の私鉄では、見るからに「プチ」です。

 でもこうしてアングルによっては、長大編成の電車がずらっと並ぶ、ようにも見えます。そしてホームで見ると、地元の利用者が圧倒的に多い印象も。古くからの路線ですので、その地元貢献度は到底「プチ」とは言えません。今後も活躍を続けるコトでしょう。


#096「土産」

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前回に続いて。またもチョロQです。左はボンネットタイプのバス。福島は裏磐梯を走る「森のくまさん号」のチョロQ。右はいわゆる「ハコスカ」。旧い日産スカイラインGT-Rです。



バスは山本真純アナがお土産に持ってきてくれました。私は直接受け取ったわけではないので、どういう理由で福島を訪ねたのかはまったくわかりません。ドライブやツーリングのコースとしても申し分のない地域ですので、そっち方面?かもしれません。…純然たる出張だったらごめん、真純よ。ネットで調べると実車はちょっと知られたバスのようで、観光客の多いこの地域で活躍しているもよう。スカイラインは、「東京ゲームショウ」の取材にでかけた森麻季アナのお土産。先輩と示し合わせもせずに、同じくチョロQを持ち帰るあたり、近野の扱いかたをよく分かっています。実車はいまも多くのファンを持つ、日本自動車史に残る名車です。

こうして並べて見ると、「昭和」の香りが漂いますね。私は、実車に直接親しんだ世代ではありません。旧世代からの「置き土産」のように見かけた感じです。「あ、ボンネットバスだ!」「すごい。GT-Rだ!」といった具合に。それが今や、ほんとうにお土産として頂戴して喜んでいるわけです(チョロQですけどね)。時代はまわる。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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