2009年6月アーカイブ

#274「開放」

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東京はまだ梅雨の時期ですが、それでも楽しめる乗りものアトラクションが誕生です。その名も「スカイバス」。日の丸自動車が新規に参入した「定期観光バス」の通称です。

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観光バスと一口に言っても免許のタイプはいろいろあるのです。団体旅行やグループでの貸切を受け付ける、そんな事業の免許がひとつ。もうひとつが「定期観光バス」というもので、こちらは一般の路線バスと同じように、決まった「バス停」から定時に出発し、あらかじめ届け出た決まったルートを走り、予約なしで(つまり飛び込みでも)乗れ、乗客が一人であっても運行する、というもの。「定期」という意味、わかりますよね。東京は長らく「はとバス」の一社が孤軍奮闘していました。今回は60年ぶりの新規参入なのです。

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しかもそのバスというのが、「2階建て、屋根なし」という、この上なく眺望のすぐれた開放的なもの。当面は丸の内から皇居周辺・日比谷・銀座周辺を50分で回る1路線ですが、これ、ほんと楽しいです。視点が違うだけでこんなに発見があるとは思いませんでした。東京観光の新たな扉も開放した!そんな気がします。


#273「宴」

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  JR東日本の和式電車「宴」 おっと目を引くカラーリング。普段目にしない電車にはやはり反応しますね。2つほど離れたホームに見えたので、下車して近づいてみました。JR東日本の和式電車「宴」です。団体用の臨時列車としておもに使用されているこの電車。ちょっと中を覗くと、たしかに「掘りごたつ」みたいな感じでずらっとお客さんが座るようにできています。

 何年か前、日本テレビの社会部が「部員旅行」なるものを実施しました。少なからぬ数の部員が土日も夜も働く職場ですから、部員の旅行というのは極めてまれな出来事です。会場はとある温泉ホテル。昭和の部員旅行といった体で、温泉に浸かって、浴衣で大広間に集まって、カラオケにお膳の宴と、実にこれが和むのでありました。

 あのノリが、電車の中で実現できるわけですね。ま、さすがに浴衣は無いですが、それ以外はだいたいいけそうです。しかも電車にはホテルの大広間にはない魅力、「車窓」がついてきます。桜の咲く堤防を眺めたり、遠方の山の頂を化粧する雪を見やったり。そうだ。この電車で部員旅行に出かければ、最初からあの和みの雰囲気が満喫できますね。できるのですが…。途中駅でホームから車中を覗かれたら…。やめときましょう。


#272「私有」

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 延々とつづく貨物列車。この列車は石油を運ぶタンク車を連ねています。エメラルドグリーンが粉糠雨に艶やかに映えて、なかなか奇麗ですね。 貨物列車写真を撮るのに気を取られ、形式番号を見るのを失念しましたが、おそらくタキ43000形だと思われます。(違ったら失礼)。こういう超大編成の貨物列車、普段の電車生活ではなかなか見ることができません。ところでこういうタンク車の多くが、「私有貨車」であること、ご存じでしょうか。鉄道会社ではない一般の企業が自前で持っている、ということです。タンク車ならば石油類、屋根というかふたの無蓋車ならば亜鉛、ほかの形では炭酸カルシウム専用、など、私有する会社の用途にあわせています。

 ということは、もしかすると私も自前の貨車が持てるのでしょうか。各地の乗りものグッズを運ぶ貨車とか、スイーツ専用の冷蔵貨車とか。昨今はエコ志向で、トラック輸送よりもエネルギー効率のよい鉄道輸送が注目されています。いままでの私有貨車は原料の運搬が主でしたが、これからは21世紀らしい製品の運搬を目的とした新形式、でてきませんかねえ…。


#271「パンタ」

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090607tel.jpg 実家周辺ネタをもうひとつ。これ、電話ボックスです。後ろに緑地の看板があることからも正真正銘、とわかりますね。しかし屋根上にパンタグラフ、のようなもの…。もちろんダミーのものですから、通電しているわけではありませんのでご安心を。

  新津(現在は新潟市秋葉区の一部)は古くから鉄道の町として知られていましたから、そのからみでこういう電話ボックスもあるのでしょう。色の塗り分けはいわゆる「湘南色」。国鉄の標準的な塗り分けのひとつである、みかん色と緑色です。このあたりも湘南色の電車が走る時期が長かったですからね。そういえば先日の乗りもノートで紹介した「ポスト」も湘南色でした。やっぱり「電車と言えば」…というアイコンなのでしょう。

 しかしこの電話ボックス、ボックスごと走り始めたら、中にいる人はびっくりするでしょうねえ。最近は携帯電話の普及で、電話ボックスで話し込む人の姿を見ることもめっきり少なくなりましたが。新津においでの際はぜひこちらへ。


#270「フイシン」

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 幼いころからの疑問が一つ。実家の近く、線路沿いに歩いて行くと、その道は線路に交わります。こんな踏切です。右側がもう駅構内ということもあり、線路の本数がけっこう多い踏切ですが、まあ何の変哲もありません。

踏切

 しかし。ひとつだけ「変哲」といっていいことがあります。それはこの踏切の名称。「フイシン踏切」であります。信越本線新津駅の北、駅を出て最初の踏切はなぜこんな名前なのでしょう。もちろんこの周辺の地名などではありません。「フイシン」…って。なんだ?

フイシン踏切

 ちなみに同じ信越本線を南に進み、新津駅から最初の踏切は「吉岡町踏切」でして、これは踏切の東側の地名と一致。非常に順当な命名です。

 このフイシン踏切、かつては線路と鉄道用地で分断されていた新津市の東西を結ぶ大事な踏切でした。それだけに通行止めの際には「このさきフイシン踏切、工事のため通行止め」なんていう看板を見ることも少なくなく、幼心にその名が焼きついたのです。最近は横にりっぱな跨線橋ができ、自動車の交通は減ったように見受けられますが、いまだ疑問は氷解しません。「フイシン」って、なんだ?


#269「新時代」

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前回の続きです。三菱のi-MiEVの発表会は、第一京浜国道に面した東京・三田の本社ショウルームで開かれました。最近は自動車不況ということもあってか、新車発表会の会場も「自前」の施設が目立ちますね。

西郷南州 勝海舟 会見の地.jpg

その会場の前、道路に面してこんな石碑がありました。「江戸開城 西郷南州 勝海舟 会見の地」だそうです。この地にはかつて薩摩の藩邸があったようで、ここで西郷と勝が会見。江戸城は無血開城されて市民は戦火に遭うことなく、明治という新時代を迎えることになります。これを知ると、この場所で新時代の電気自動車が発表されるというのも、何か象徴的なのかも、と思うのであります。目の前の道は「旧時代」の車が列をなし、ガソリンを燃やし、排ガスを出して走っていて、それとの対照もはっきり認識できますし。

アイミーブ4.jpgこの石碑と並ぶ「i-MiEV」。周辺のオフィスへ出勤途中の皆さんにも非常に認知度が高かったのが驚き。男女を問わず「コレ、新しい電気自動車だね」と口にする方が多数見受けられました。すでに世の中の意識は新時代にシフトしつつあるようです。


#268「ベール」

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アイミーブ1.jpg世界初の本格的な量産型電気自動車が発売されました。三菱のi-MiEV(アイミーブ)です。その発表会に行ってみるとベールをかぶった実車がステージ上に…。これは期待が高まり…ますが、そういえばこのほかに何台もベールをかぶっていない実車が展示されています。建物の外にも3台。どんな中身かバラしちゃっていいのかな。

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そもそもこの車、去年春に私も試乗してから、さらなるリファインを重ねての発表。ですから「外見」についてはおなじみなんですもんね。エンジニアの話では、「フルファンクションEV」とのこと。つまり、あらゆる局面で従来の車に代わりうる機能を備えた電気自動車、ということなんですね。

当コラムでも報告の通り、その走りの性能はピカイチです。よく勘違いする方がいるのであえて書きますが、ゴルフのカートや空港でみかける荷物運びのカートなんぞとはまったく別物ですから念のため。高いポテンシャルを備えるだけではダメで、市販というのは乗りかたも日常のメンテも「乗り手任せ」が基本ですから、信頼性は実験車のそれと比較になりません。三菱の渾身の一台です。

ではベールを取りましょう。…こちらが未来を拓く一ページになるか。注目です!

アイミーブ3.jpg


#267「ポスト」

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郵便電車風ポスト

 城下町なら城郭風、茶どころならば茶壷風、など、郵便ポストにはさまざまなバリエーションがあります。が。これはどうでしょう。「郵便電車風ポスト」です。

 ところはJR品川駅のコンコース。かつて活躍した郵便輸送電車「クモユニ」を模したデザイン。みかん色と緑色のツートーンは「湘南色」と呼ばれる国鉄伝統の塗り分けです。運転席の正面窓を投函口にするという秀逸なアイディア。実車両の雰囲気を存分に残していますよ。ホンモノがどんな感じかご存じない方は、「郵便電車」で画像検索してみましょう。あらびっくり。デフォルメしつつも確かにそっくりですから。

 品川駅の改良と駅ナカの完成を記念して造られたそうで。横に立っている「0キロ」の標識(ゼロキロポストといいます)は、品川を起点とする「品鶴線」の起点を示すもの。ダブルの「ポスト」で書状を受け止めているのですよ。なんだか走りだしそうなぐらいの精巧さ。説明書きを見ると東京総合車両センターで作ったとのこと。さすがプロの仕事です。


#266「本質」

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世の中の多くの乗りものは、A点とB点を早く快適に移動することをその目的としています。電車も、飛行機も、車もそうですよね。しかるに、遊園地の乗りものというのはそうでない場合がほとんどです。

 観覧車.jpg

写真の観覧車もその一つ。乗車点と下車点がまったく同一という点がその特徴の一つです。考えてみると、観覧車が丸ごと窓のない建物に覆われていたらどうでしょう?上までいって、同じ場所に降りてくることに何の意味があるでしょうか。見晴らしのよい場所にあればこそ、同一点への移動でも観覧車の意義はあるのです。物理的移動よりも、視覚的な喜びが観覧車の本質、と言えましょう。「観覧>車」の関係です。圧倒的に。

ということは、観覧車という「車」に純粋に「乗る」行為だけを楽しむならば、ゴンドラに乗ったらすぐ眼を閉じる。そしてガチャリとまたドアが開けられるまで、じっと眼を閉じたまま観覧車の「動き」を感じ取るべく、自らの感覚を研ぎ澄ましてみるほかないわけです。小さく豆粒のように動く地上の人々や、はるかに見渡す街や自然のようすを観覧するという誘惑に打ち克つことが、「乗りもの」としての観覧車に「乗る」行為を極めることになるのでは…。ううむ。私がそういう境地に至るにはまだまだ長い道のりが待っています。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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