2010年1月アーカイブ
なおも続く山陽シリーズ。今回は「鞆の浦」です。言わずと知れた「ポニョ」のふるさと。もちろんそれ以前からも山陽きっての名勝として、国内外にその名をとどろかせていた場所です。潮待ちの港として古くから栄えてきたこの町。ちょっと歩くだけでもその空気が凝縮されて残っている感じがします。
で、さっそく円形の港に足を運んでみると、さっそくドキッとしたのがこの軽トラック。ギリギリ、海に転落寸前のところでピタッと停めています。しかもバックで。おお、ひとの車ながらドキドキ。しかし真横まで回ってみると、その先はいきなり垂直の護岸になってるわけではなく、一応、階段状に水の中にはいっていく感じ。ちょっと安心しました。
しかしこのギリギリ感、もしも誰かの誘導なしに停めたのならば、そりゃ大した腕前です。当コラムの#320で紹介した、あの大胆なドライバーさん、当コラムを読んでいらっしゃるかなあ。もし読んでたら、鞆の浦にでかけてこの軽トラックのドライバーさんからバック駐車の極意を学んでほしいなあと思ったりした私でした。大きなお世話か。
山陽シリーズ、まだあります(どんだけ写真撮ってんねん)。今回の写真は尾道駅。115系、まだ頑張ってますね。瀬戸内色と呼ばれるこのカラー、なかなかシックで控えめなところが瀬戸内海と同じような感じで好感が持てます。
ところでこの尾道の街は、大林宣彦監督の映画の舞台になったように、じつに風光明媚でひとの郷愁を誘う街、であります。何しろざっと南側から順に、「海・港・港町・商店街・国道2号線・JR山陽本線・高台の住宅地・寺社と公園」という豪華なラインアップ。人の息づく場所、その魅力のすべてを一番バッターから九番までそろえてしまったようなものですから。
街のシンボルのひとつ、千光寺の本堂から見下ろせば、そのすべてが手中に入る感じがします。ことに岡山側からやってくる山陽本線のカーブ、小さく115系が見えます。国道には大きなトラックが往来し、そして港の先では輝く海に波紋を残す大小の船。ああ、こういうジオラマを作ってみたい…という「箱庭感」。そりゃ映画の一本も撮りたくなりますよねえ。
大橋、という地名や橋は全国そこかしこにあります。が、このスケールに勝るものはないでしょう。瀬戸大橋さんです。写真はその一番本州寄り、下津井瀬戸大橋のダイナミックな光景であります。すでに開通から20年余。本州と四国を直結する大動脈となっています。それを下から眺めるのは初めてだったのですが、あまりのスケールに、ちょと面食らいました。
鷲羽山の高台に上るとその眼下には島から島へ、そして四国へ。橋が非常にゆるいカーブを描いて連なっていくのが見えます。よくこんなもの造ったなあ…と感慨しきり。
さて橋の下に居ると、何が上を走っているのか見えません。しかしよくわかるのは、電車が通過したとき。けっこうな轟音を頭上から響かせて電車は走り去ります。…これ、けっこうな騒音ですな。もともと静かな漁村だったはずのこのあたり、視覚的にも、聴覚においても、大橋が地域に与えたインパクトは大きかったでしょう。
昨今は例の高速道路1000円、で「四国にうどんを食べに」なんて御仁も多いようです。実際関西圏だったらここまで200キロちょっとでしょうかね。羨ましいなあ…。海に山に美味に。山陽、四国の魅力は「大橋」でつながれています。
尾道シリーズの続きです。久々に当コラムに登場するは、ロープウエー。あれは確か蔵王の回(#038)以来ではないでしょうか。尾道のロープウエーはすでに50年以上の歴史をもつ、大ベテラン。私が訪れた日も、15分おきに行ったり来たり、急斜面を静々と登り降りしながら絶景を見せてくれました。
ところで、縁起でもないことなんですが、ロープウエーのトラブル、稀にありますよね。強風や機械のトラブルで途中停止してしまうこと。乗っている人にとっては完全に密室、下界と隔絶した空間で、心細く救出(あるいは運転再開)を待たねばなりません。この状態を称してなんと言うか。
たまーに、新聞の見出しやニュースのタイトルで見られるのが「ロープウエー、宙吊り」というもの。しかしいつも私は気になるのですよ。だってロープウエーは正常に動こうがトラブルで止まろうが、何にせよいつでも「宙吊り」なんですもん。私のところにそういう原稿が回ってきたら、必ず手直しします。「ストップ」とか「立ち往生」とかね。
前回に続く「前後対称」のフェリーについて。船着場で発着のようすをみていると、飽きません。手際よく車はガタゴトと渡り板を渡って船内へ。人はゆったりと降りてきます。船は非日常にあらず。完全に「生活」の一部と化しています。だってよく見てください。赤いボディの郵便車が乗ってるでしょ?
面白いのが、船内での待機のしかた。乗ってからものの数分で下船するわけですから、郵便車をはじめ車のドライバーが車から降りないのは当たり前。何よりおかしいのはバイクや自転車の面々。船着場で船のおしり(陸側)から乗り込むや、船内を縦に突っ切って、海に面した前方へ。そして船が目的地に着くまで、バイクや自転車に跨ったまま、その出発や到着を待つのです。横一線に並び、スタートを切ろうというその姿がなんとも面白く映ります。
で、船が対岸に着いて、目の前の渡り板が陸と自船のあいだに渡されるやいなや、一斉にダッシュしていく二輪車たち。壮観です。あれは一頃の中国・北京あたりの自転車ラッシュを思い起こさせる、二輪車の名場面、と言っていいでしょう。
広島は尾道のフェリーです。すぐ向かい側に見える、その名も向島と本州側を行ったり来たりしていました。すぐ近くに海のある街っていいですよね。しかも瀬戸内海の奥まったところですから、そんなに激しい時化もそうそうないでしょうし。フェリーはこの日も穏やかな海を実直に動いていました。
ところで面白いのは、この船の動き。ふつうの船は前後が決まっています。舳先のほうがシュッとすぼまって、おしりのほうはいかにもおしり。でもこの船は上から見ると長方形。前後両端には、陸地とスムーズにつながる渡り板が双方装備されています。そして操舵室はというと、船のど真ん中。上に鎮座しているわけで、はたしてどっちが舳先なのでしょうか。そう、ディーゼル機関車ってこんな感じですよね。DD13とか、DD51とか、凸型でね。
となると水中にあるはずのスクリューはどこにどういうかたちでついているのでしょう。前後双方に?それとも操舵室の真下、ど真ん中?水に入ってみてみたい気もしますが、冬の水が冷たそうなのでやめときました。
はいまずこちらの本棚の写真。たーくさん収められていますね。はいこれはどこの本棚でしょうか?
正解は、「空港」です。岡山空港の出発待合。チェックインして、荷物を預け、セキュリティチェックを無事終えて、あとは搭乗を待つあのロビーです。同じカメラ位置からアングルを変えると、こんな感じ。
先日行った上野の「子ども図書館」じゃないですが、相当数の絵本や子供むけの本が並んでいます。この日のフライトは出発が少々遅れたのですが、この図書棚のおかげで意外と退屈せずに済みました。「おおきなかぶ」「バーバパパ」などの絵本をパラパラと…。ほかにもなぜか「友人の結婚式のスピーチ集」から「大英博物館」の収蔵品録まで、じつに雑多な、もとい、多様な一般書籍も置いてありました。おとな向けとこども向けの割合は半々ぐらいでしょうか。
本を買うまでもないけど手持無沙汰、というときにうってつけ。こういうのって、ほかの空港にもあるのでしょうかね。こんど探してみましょう。
追記:しばらく「岡山・広島訪問シリーズ」が続きます。お楽しみに。
これから書くことは決してクレームや告発などの類ではありません。むしろ「微笑ましい」「好ましい」といったカテゴリーに属する話でありますので気楽にどうぞ。念のため。
先日地方から乗った飛行機。冬の北西季節風は東京で強く、どうやらその日は西寄りに吹き付けていたようです。短い水平飛行のあと、ほどなく降下を始めるという段になって、機長からのアナウンスがありました。羽田では東西方向の滑走路に着陸するという内容ですね。飛行機は向かい風を受けながら飛ぶのが基本ですから。
耳を澄ますと、「地上からの報告では、羽田周辺は西風が大変強いとのこと」、で、ここからが秀逸です。「ただ当機は横風にはけっこう強い機体ですのでご安心を…」思わずツッコミたくなる「けっこう」であります。いやぁ久々に味のあるアナウンスに当たりました。「横風にけっこう強い機体」って…。ちなみにエアバスA320だったんですが。さっそく帰宅後に当該航空会社(XX社)に勤務する友人に報告すると、俗に、「風にけっこう強いXX社、雪にけっこう強いYY社」、だそうで。まぁもちろん横風も雪も、同じように厳格な基準があるのは当然でしょうけど。
この機長アナウンス、普通なら「横風で揺れても安全なフライトに問題はありません」、みたいな「絶対性」をアピールする通り一遍の内容であるところ。「けっこう」という形容がなされることで、急に「相対性」が出てくる点が面白いのですよ。「ほほぉ、A320はけっこう強いのか。じゃあB737はどうなんじゃ?」といった具合に。
ちなみにこの機長、続けて「現在使用している滑走路が(横風用の)一本ですので、羽田周辺は混雑しているみたいです」とも言っていました。「…みたいです」っていうのも、フツウの会話調で非常にいい。いずれもよそ行きでない、「自分の感覚」に忠実な言葉えらび。きっと正直で誠実なパイロットなのでしょう
ちなみに。横風が強い、混雑している、といってももちろん「欠航」するほどではなく、多少遅れただけ。じつに結構なフライトでありました。