#327「けっこう」
これから書くことは決してクレームや告発などの類ではありません。むしろ「微笑ましい」「好ましい」といったカテゴリーに属する話でありますので気楽にどうぞ。念のため。
先日地方から乗った飛行機。冬の北西季節風は東京で強く、どうやらその日は西寄りに吹き付けていたようです。短い水平飛行のあと、ほどなく降下を始めるという段になって、機長からのアナウンスがありました。羽田では東西方向の滑走路に着陸するという内容ですね。飛行機は向かい風を受けながら飛ぶのが基本ですから。
耳を澄ますと、「地上からの報告では、羽田周辺は西風が大変強いとのこと」、で、ここからが秀逸です。「ただ当機は横風にはけっこう強い機体ですのでご安心を…」思わずツッコミたくなる「けっこう」であります。いやぁ久々に味のあるアナウンスに当たりました。「横風にけっこう強い機体」って…。ちなみにエアバスA320だったんですが。さっそく帰宅後に当該航空会社(XX社)に勤務する友人に報告すると、俗に、「風にけっこう強いXX社、雪にけっこう強いYY社」、だそうで。まぁもちろん横風も雪も、同じように厳格な基準があるのは当然でしょうけど。
この機長アナウンス、普通なら「横風で揺れても安全なフライトに問題はありません」、みたいな「絶対性」をアピールする通り一遍の内容であるところ。「けっこう」という形容がなされることで、急に「相対性」が出てくる点が面白いのですよ。「ほほぉ、A320はけっこう強いのか。じゃあB737はどうなんじゃ?」といった具合に。
ちなみにこの機長、続けて「現在使用している滑走路が(横風用の)一本ですので、羽田周辺は混雑しているみたいです」とも言っていました。「…みたいです」っていうのも、フツウの会話調で非常にいい。いずれもよそ行きでない、「自分の感覚」に忠実な言葉えらび。きっと正直で誠実なパイロットなのでしょう
ちなみに。横風が強い、混雑している、といってももちろん「欠航」するほどではなく、多少遅れただけ。じつに結構なフライトでありました。