2009年4月アーカイブ

#256「横断」

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「横断」と聞くと、「大がかりな冒険旅行」みたいなイメージを勝手に抱く私です。外国語でいうと「オデッセイ」「ボヤージュ」みたいなイメージ。ま、これは「横断」→「アメリカ横断ウルトラクイズ」からの連想なんですが(笑)。つまり、ロマンのようなものを感じるのです。たとえそれが「新橋横断」くらいの規模であっても、なんだか大きなことやっているようなニュアンスを帯びるのが不思議です。私だけでしょうか。

きょうご紹介する「横断」は、そんなロマンをかきたてる列車。「九州横断特急」です。文字通り、大分と熊本のあいだを阿蘇経由で結ぶのですが、こういう規模だとまさに「横断」らしくなりますよね。こっちの海からあっちの海まで。しかも途中の山間部は絶景の連続!乗る価値は阿蘇の頂より遥かに高いと聞きます。

 

横断.jpg時刻表をみるとわかりますが、高速道路網も整備された現在、このちょっとのんびりした列車で本当に起点から終点まで乗り通す人はそう多くないのではないでしょうか。でも「横断」の魅力は抗いがたいものがありますよねえ。アメリカ横断ウルトラクイズのような「知力・体力・時の運」も不要。このGW、ロマンを求めるなら「横断」を!


#255「バスツアー」

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 世の中には数え切れないほどの「ツアー」があります。試しにグーグルで「バスツアー」を検索すると、151万件がヒットします。もっとも151万種類のバスツアーがあるわけではありませんが。そんな2009年の「バスツアー界」に、「!」マークを多用したくなるメニューが加わりました。それがこちら。

観光バス運転体験ツアー

 「観光バス運転体験ツアー」です。マニュアル車の普通免許を持っている人ならだれでも、大型の観光バスを運転できるという内容。つまり「バス(の運転を楽しみに行く)ツアー」なのです。これを企画したのは日本テレビの社内にある、読売旅行の日テレ営業所。

 午前中、山梨県甲府市内で運転講習をうけ、午後は甲斐市に移動して実際に運転しちゃうという、乗りもの好き・バス好きにはたまらない行程です。しかも運転会場は飛行機の滑走路!…つまり、広々とした私有地の中だから、営業用の大型バスに必要な大型二種免許をもたないバスファンでも運転ができてしまうわけです。しかもこの滑走路、航空科をもつ「日本航空学園」の施設。「飛行機好き」にもグッと来るロケーション。

 あの平たく大きなハンドルを華麗に回し、大きなバスを操る自分…想像してみてください。こどもの頃から「一度やってみたかった」という方、少なくないのでは?会場のみならず、バス会社の協力も得られないと実現しないツアーですから、めったにないチャンスなんでしょうね。このツアーは「バス」そのものがメインディッシュ。しかも実は甲府駅に集合ということで、「バスの客席で道中も楽しむ」通常のバスツアーとは性格付けがまったく異なるのも面白いところ。

観光バス運転体験ツアーを企画したOさん

 このツアーを発案したのは日テレ営業所のOさん。そもそもこのツアー、Oさんご自身が小さい頃に抱いた大きいクルマへの憧れが企画の発端なんですって。旅行会社にお勤めゆえ、「ツアーを組めば喜ばれるのでは?」と。なるほど「好き」という気持ちはこういうふうに結実するのですね。
 まだ参加者募集中。ご興味のある方は「読売旅行」「日テレ営業所」で検索を。


#254「原色」

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国鉄特急赤とクリーム

 こちらは昔懐かしい「国鉄特急色」です。私のような昭和生まれの鉄道ファンは、この、赤とクリーム色の塗り分けこそ、「特急」の「原色」なのであります。しかるに国鉄末期、分割民営化の頃から、急速に塗り分けが多様化しました。地域ごと、路線ごと、あるいは特急の名称ごと、といった具合にバラエティに富んでくるわけです。車内設備の更新に合わせて外装も原色におさらばするのは必然なのかもしれません。

 「撮り鉄」と呼ばれる、撮影を専門にする鉄道ファンにとっては、「採集」する対象が爆発的に増えたわけです。しかも、はかない期間で新しい塗り分けも変更されたり消滅しちゃったりしますので、これは油断ならないのでしょうね。

大分駅特急

 ということで、もう1枚の写真。九州は大分駅で撮影したこちらはずいぶんと派手な塗り分けです。でももとの形は1枚目の写真と一緒。ここまでくっきりした赤や緑の原色で大ぶりな塗り分けも珍しいのでは。さすがJR九州です。帰京して女性スタッフにこの写真を見せたら、「この電車、すんごくかわいいですね。どこ走ってるんですか?」と言っていたので、好感度もいいようです。原色から原色へ。それぞれにファンがいるわけですね。


#253「食事時」

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 東京から西へ旅立つことをイメージしてみてください。新幹線で。時刻は正午前。お昼ご飯に弁当と飲み物を買って乗り込みました。定刻通り新幹線が出発。景色はあなたの後ろへとぐんぐん流れていきます。

 さて。弁当を食べましょう。あなたはどのあたりで、弁当の包みをほどくでしょうか?新橋、浜松町のあたり?まだまだ林立するビル、その隙間に霞が関ビルや東京タワーが見える?…ほう、都心で召し上がるあなた。ずいぶんお早いですねえ。

 私の場合、多摩川の鉄橋を渡るあたりですね。都心部の「オンの東京」を出て、品川区、大田区の住宅が混じるあたり「オフの東京」も出たあと。つまり「東京を脱ぎ捨てた!」というタイミング。仕事にしろ旅行にしろ、日常が後方に消え去ったときがそのときです。写真のあたり、車中の私は「切り替え」モードになっているハズです。その瞬間に念押しをするのが、車中で広げるお弁当♪

多摩川の鉄橋

 最近は「駅弁」ではなくデパ地下で仕入れることが多いお弁当。脱ぎ捨てた東京なのに、包みのなかは「よそゆきの東京」の、ちょっと非・日常の匂い。ああ、その瞬間が東海道新幹線のいいところ、なのであります。ま、だいたいは小田原の手前で食べ終わって、熱海では「睡眠」に入るのが定番。儀式的なれど、本能の赴くままなのが恥ずかしいところ。皆様、車中でその儀式を進行する私を見ても、放っておいてください。


#252「空洞」

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空洞

 まず問題です。このトンネルはどこの現場でしょうか?よーく見て考えてください。サイズは…直径数メートルぐらいでしょうか。そう大きくはありません。左に見える赤いカラーコーンからもその大きさがわかりますね。まだ貫通していないのか、突き当りには壁があるように見えます。

 はい。正解は…トンネルじゃありません。飛行機の中、です。は?座席は?ありません。なぜなら貨物機だからです。…へえ…貨物機って、私も実機を見たのは初めてでした。写真の奥は機体の最後部。床の上を前後方向に伸びているのは、搭載したコンテナを軽く滑らせるための「コロ」や、コンテナを固定するための金具、です。窓がないというのも、貨物機らしいですよね。このボーイング767は50トンの荷物を積んで飛ぶことができるそうです。しかも、エアコンディション付き。航空貨物は精密機械や貴重な美術品なども運びますからね。荷物と言えど、恵まれた環境ですね。しかもこの広さ。「我が家より快適」かもしれません。

森麻季さん

 お、この女性はモリマキさんですな。ちなみにこちらは床下部分。そうか、「2階建て」みたいなものか…。機体右下の扉をガバッと開けて覗き込んだところ。こちらも天井などにエアコンディションのダクトが見えました。ますます我が家より…。


#251「比率」

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ある日の品川駅の様子です。新幹線のホームはまだ新しく、電光表示板も見やすい大型のものですが…見ると、あることに気付きます。「のぞみ」ばっかりなんです。左右のホームから出ていく6本の列車のうち、5本が「のぞみ」。で、あらためて時刻表を見ると、東海道新幹線の「のぞみ」シフトはここまでか、というほどに強まっています。

品川駅.jpg

私など、東海道新幹線で出張に出かけるときは名古屋、新大阪などまで行くことがほとんどです。去年は「掛川」「浜松」にも出かけたのですが、そういえば静岡県内、とくに県の西部は「割りを食っているなあ」と思いましたよ。つまり、新幹線は数分ごとに東京を発車しますが、掛川、浜松あたりに行こうとすると、とたんに本数が激減するのです。それだけ「ひかり」「こだま」が減っているのです。

1時間に「ひかり1本、こだま1本」で始まった新幹線の歴史。ずいぶん変わったものですね。将来、「リニア新幹線」が開業の暁には、「のぞみ」の乗客はリニアにシフトすると見込んで、現在の東海道新幹線は「ひかり」「こだま」の比重をぐっと高めるそうです。そうなると、この写真に見える表示もまた様変わりしますね。


#250「正直」

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飛行機整備場1.jpgビルの建築現場…のように見えなくもありませんが、違います。飛行機の整備場です。先日、羽田にある日本航空の整備場を見学してきました。この写真は、整備中の飛行機をほぼ真後ろから見たところ。よく見てください。真ん中に赤いJALの垂直尾翼が見えますでしょう?その高さは…横の階段を見れば分かりましょう。すべてのサイズが大きくて、ここに入ってしばらくは感覚がおかしくなってしまうほどでした。

 

この見学に先立って、整備本部のトップにお話を聞く機会にも恵まれました。折しも新人を迎える時期。ひとつ伺ってみました。「整備に関わる、という観点ではどんな人材が欲しいとお考えですか」…すると、まっ先に挙がったのは「正直な人ですね」との答え。…「正直」です。

 飛行機整備場2.jpg

知れば知るほど、整備の仕事は地道で誠実にやってもらわねば困ることばかり。大きな大きな機体やエンジンを、場合によっては部品単位にまでバラして厳密に整備し、また組み上げる…。「まあいいか」と、本来100やるべき仕事を99で済ませてしまったり、どんな小さな部品でもなくしてしまったり、基準に満たないまま通したり、そんなことは万が一にもあってはなりません。なるほど、「正直な人」というのは機体整備に不可欠なんだと合点がいきます。

帰社して、その話をスタッフにしたところ、「なるほど。結婚するなら飛行機の整備士ですね」と言った女性がいました。なるほど。なるほどね。


#249 「ホバー 2」

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 ホバークラフトは地表面や水面から浮き上がるがゆえに、抵抗が少ないため高いスピードが可能になるのです。反面その特性ゆえに、操縦には非常に繊細なワザを求められます。昔読んだ本では「もしも素人が操縦桿を握ったら、ボンヤリしているうちに風に流されてあらぬ方向にすっ飛んでしまう」と書いてあった記憶があります。 ホバークラフト操縦席浮き上がっているということは、「その場に踏ん張れない」んですもんね。確かに見ていると、パイロットは片時も手を休めることがありません。…そして乗り心地は。波頭に当たっているのでしょうか、時々お尻の真下からズンズンと突き上げる感覚があります。でも快適快適。

  ホバークラフトそしていよいよメインイベント。空港での「ドリフト走行」です。海から上がったホバーは、空港ターミナルへ進みます。その途中、S字カーブがあるのですよ。そこでは船体は向きを変えないまま、横方向にスライドして進むのです。これもスピードを落とさないための作戦か。これが…不慣れな乗客が驚かないように「横方向に動きますがご安心下さい」みたいなアナウンスもあって、乗りもの好きはますます期待が高まります。パイロットは紙幅の都合で書ききれない、同時並行的な操作を休み無く繰り広げて、きわめてスムーズに到着しました。すみません、表現力不足。何しろ私自身もパイロットの手さばき、外の景色、乗客の様子などいくつ目があっても足りないぐらい見ていたもんですから…。

 新年度。なかなか明るい話題の見つからない春ですが、たまにはホバークラフトのように、ちょっとした浮き浮きがあるといいですね。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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