2008年8月アーカイブ

#188「貫通」

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 よい子の皆さん!夏休みの宿題は終わっていますかね。私はわりとよい子で過ごしたので、いつも早めに終わっていました。まあ漢字の書き取りだとか計算ドリルなんかは、ヒイヒイ言いながらも頑張れば徹夜でも仕上げることはできそうです。しかし「自由研究」ばっかりはムリですよ。…でも最近はわからんなあ。何しろインターネットという強い味方が登場しましたもんね。図書館に行ったり、実際に植物を育てたりしなくても、悪知恵を働かせればそれらしいテキストと画像が集められそう…。チェックする先生たちも大変だ。

 ということで、来年の自由研究のテーマになりそうな写真を一枚。大阪・梅田から福島に向かい歩くとその途中にあるビルです。阪神高速の梅田出口の車路が5階から7階部分にかけて貫通しています。竣工から15年以上経っていますので大阪の皆さまにはもはや「日常の光景」なのでしょうが、やっぱり我々の目には衝撃的な建造物であります。もちろん出来上がったビルそのものが視覚的にインパクト大!ですが、これを造るまでの経緯、法的な位置づけなども、なかなか興味深いんですよ。こういう「おもしろ建造物」、私はとってもそそられるんですよねえ。よい子の皆さん、みんなの街や近くの都市にも面白い建造物、あるはずです。来年はぜひ探訪してみて。

ビルを貫通

#187「70周年」

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 世界の自動車史にその名を残したフォルクスワーゲン・ビートルが誕生したのはちょうど70年前のこと。1938年の今頃にはすでに最終的なプロトタイプが出来ていたようです。当時のドイツはヒトラー政権下。大衆の支持を広げたいヒトラーがぶち上げたのが「国民車構想」でした。ドイツ国内を縦横に結ぶ高速道路「アウトバーン」とセットで打ち出されたこのビジョンに基づき、天才技術者フェルディナント・ポルシェが設計しました。

 実際には、翌1939年、ナチス・ドイツ自身の軍事行動を発端に第二次世界大戦が始まり、広く国民大衆にこの車が行き渡ることはありませんでしたが。戦後、ドイツのみならず世界中でこの車が愛されたことはご存知の通りです。日本では新車価格の高さもあって、大衆車というよりは質実剛健な上級実用車という印象でしたが。
 私の周囲でビートルといいますと…幼稚園の時分、同じクラスのさやかちゃんの家。カーポートには綺麗な空色のビートルがあった記憶が。子供ごころにもいいなあと思ったものです。で、今さらのようにミニカーで代償行為に及ぶわけですね。写真は我が家のミニカー。ビートルとその仲間たちの一部です。

我が家のミニカー

#186「鉄道本 2」

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中公新書の「電車の運転」(宇田賢吉・著)

 前回に続いて鉄道ものの本をご紹介。中公新書の「電車の運転」(宇田賢吉・著)であります。これはスゴイ。何といってもそのものズバリのタイトル。そして下に巻いてある帯には「ようこそ、運転室へ」というキャッチーなコピーが。
 鉄道にまったく関心のない、弊社の先輩にこの本を見せたときのリアクションが面白かったのです。表紙を見るなり「ようこそ、って誰に言ってるのよ」。私の理解では鉄道好きの人、全然興味のない人、すべてを含みます。間口の広い本です。

 そして第1章の1「鉄道の長所と短所」の冒頭に目を通す…そこにはこう書いてあります。「最初に、鉄道の長所と短所をおおまかに説明しよう」「まずは鉄道は線路という専用通路を走ることでマイペースの運転が可能であることを、長所として挙げよう」これを読んだ先輩いわく「マイペースの運転って、鉄道がマイペースじゃまずいでしょ」とひと声。そう。「マイペース」の意味は本書を読み進むにつれわかるのです。

 この本、実際に運転士だった人が実地の経験をもとに、じつに細かく鉄道の仕組み、電車の仕組み、運転の仕組み、を説明していくのです。最終章は「運転士の思い」というタイトルですが、そこに至るまでに、運転士の心理というのはわかった気になる、それほど仔細に鉄道という輸送手段のシステムとオペレーションを紹介しているのでありますっ。「っ」と息が荒くなるぐらい。いやあ、確かにスゴイ。

 何がスゴイって、中身もさることながら、中公新書がこういう本を出すということ。今やそういう時代なのですね。本体のお値段840円。以前に取材現場でお世話になった、中央公論新社の担当者に問い合わせたところ、「大好評ですでに軽々と5万部を突破、増刷を繰り返している」とのこと。鉄道ブームの大きさを感じるじゃぁないですか。


#185「鉄道本 その1」

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 今回と次回は空前の(?)ブームを迎えている鉄道趣味の世界に放たれた衝撃の書籍をご紹介しましょう。…と言いましても、いずれも「近野は鉄道好き」という情報をもとに、出版社から送られてきた本なのですが。「乗りもノート」を継続しているとこういう功徳もあるものです。


鉄道本 「日本鉄道旅行地図帳」 新潮社

 まずは新潮社から。「日本鉄道旅行地図帳」。これはありそうで無かった「正縮尺の鉄道地図」であります。「鉄道好き&地図好き」である私にピッタリの一冊。


鉄道本 「日本鉄道旅行地図帳」 新潮社

 普段われわれの手にする時刻表の地図はかなり無理をしてページにおさめるため、地形は歪み、駅間の距離も適当、です。しかしこの地図帳は、ちゃんとした地図の上に、ちゃんと路線を書き、駅も表記。これは便利です。列車を撮影に行く時に大まかな地形や線路のカーブ・直線などはわかりますし、単線・複線の別、急勾配なども事前にインプットできるんですね。


鉄道本 「日本鉄道旅行地図帳」 新潮社

 しかも沿線の名駅舎、車窓の絶景、廃線の地図や収録地域の全線全駅に関するデータ(廃線も含む)なんていうものまで盛り込まれています。北から順に発行されているようですので、全部そろえると、それはみごとなデータブックに。


 ところでどういうきっかけで、どういう選定基準で、この本の送付先に私がリストアップされたのか、気になります。さっそく新潮社に聞いてみると「鉄道がお好きで、地図がお好きと拝察しましたので送らせていただきました」との由…。ワタクシ、新潮社にはそういう人物として「認知・登録」されているのですね。ありがとうございます。そのとおりです。



#184「老舗のタレ!?」

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F家の電車ブラザーズ

 当コラムのゲスト出演回数で最多を誇る、F先輩のご長男はもうすぐ5歳。まもなく2歳となる次男クンも電車好き。「ママ」の次に覚えた言葉は「でんしゃー」だったそうで。普通は「パパ」じゃないの?F先輩、大丈夫?


副都心線

 そんな兄弟が夢中のプラレール。最新モデルは話題の副都心線!走行するとライトも点灯します。オトナの鉄道模型並みですね。いずれ彼らもプラレールを「卒業」し、そっちに上級移行する日が来るかもしれません。事実、F兄弟が持っている大量のプラレールは、すでに「卒業」した従兄弟から受け継いだモノが殆どで、その従兄弟も一部は知り合いから頂いたとか。中には絶版になったり、入手が困難になったりと、レア物もあるそうです。


 常磐線の「スーパーひたち」。これは初登場時に製造されただけで、いまは生産されていないとか。


常磐線の「スーパーひたち」 ロータリー除雪車

 ロータリー除雪車もありますよ。黒い車体を蒸気機関車が後ろから押すタイプ。30年以上前に発売されていたそうです(私も友達の家で見た記憶あり)が、その後生産されず。99年に復刻生産されたそうです。


C53

 そして極めつけがこちら。「プラ」レールなのに、珍しいブリキ製です。「C53とマイテ39」。これはプラレール40周年を記念した商品。当然、今はどこの店頭にもありません。プラレール誕生の際、「もしもブリキで商品化されていたら…」というアタマの体操のような発想がそのままカタチになったものとのこと。
 今や入手困難、ネットオークションでも高値がつくというレアもの。そんな事情を知らずに車両を受け継いだF家の電車ブラザーズ。最新の「副都心線」もいつかプレミアムがついた状態で、誰かに引き継がれるのでしょう。代々受け継がれ、価値が継ぎ足されていく…まさに老舗の「うなぎのタレ」のようです。


#183「窓無し」

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  またも窓のない席に当たってしまいました。ボーイング747-400の2階席です。座席番号は71の列。乗り込む時点で「もしや…」と危惧していたのですが、案の定。

窓のない席

いざ腰を下ろしてみると、もはや気持ちイイぐらい、「囲まれ感」に圧倒されます。目の前は、壁。横を向いても、壁。反対側の横を無いても、同様に、壁。もっとも、朝ものすごく早い時間のフライトでありましたから、離陸する頃には上手に「夢の世界」へテイクオフ。耳にイヤホンを入れまして、落語にチャンネルを合わせていたのですが、ほとんど噺を聞くこともないままに、眠りに落ちました。我ながらたいへんなスピードです。

  ただひとつだけ、この席に座るメリットも。すぐ目の前がコックピットの入り口。先日シミュレーターにて実際にくぐった、あのドアです。この日のフライトでは、乗客への飲み物のサービスが終わったところで、コックピットへも飲み物が届けられました。一瞬だけ開け閉めされる頑丈な扉。その一瞬に、中の様子がわかります。なまじ操縦シミュレーションを体験しただけに、機長や副操縦士の「一服」には今まで以上に寛容になった私。ちらりと見える後ろ姿に向かって「着陸までどうぞよろしく」と、心のなかで呼びかけたのでありました。

  でもね、やっぱり地上のようすが見え始めるころには、ちょっと外の様子を窓から窺ってみたいものであります。若干無理をして首を斜め後ろに向け、後席のお客さんに気を配りながら、後方の窓を垣間見る…。なぜそこまで、と言われたら困りますが、そこまでしちゃうのが乗りもの好きの性分、なのです。


#182「持ち込み手荷物」

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 出張や休みで飛行機に乗る機会が続いたこの2か月余り。前々から気になりつつもやはり看過できない状況を再確認することができました。すなわち、「機内持ち込み荷物問題」です。

持ち込み手荷物

 あるとき、私の隣に座った若いサラリーマン。誰がどう見ても「持ち込み」には大きすぎるトロリーケースをよろよろと引きずって自分の席にやってきました。そこは機内の最後部の列。「こんな大きな荷物、どこにどう収納するのよ」と心のなかでつぶやく私。彼自身も荷物の置き場を視線で探します。しかし少々遅れ気味で乗り込んだ彼のタイミングでは、どの棚もふさがっているのが当たりまえ。すると驚くことに、彼はその荷物を自分の脇の通路に置いて、そのまま座ってしまいました。
 そこに通りかかるキャビンアテンダント。その第一声を聞いて私はさらに驚いてしまいました。「こちらお客様の荷物ですね。しまう場所を探してまいります」…おいおい。そうじゃないでしょう。誰がどう見てもルール以上の大きな荷物ですよ。まずは「お客様、この荷物は持ち込むのには大きすぎますね」と、たしなめるところから始めないと。現に、「しまう場所を探してまいります」と言われたサラリーマン君は、「よろしくうぅ」と言わんばかりの表情で黙ってふんぞり返って(明らかにそういう座り方でした)います。
 で、少々前方から戻ってきたアテンダントさんは「6列ほど前になりますが、しまえる場所がありましたので、入れてまいります」と言って、そのバカでかい、重いケースを「うんしょ、うんしょ」と持って行き、何とか収納したのでありました。
 昨今、大きさと容量のわりに持ち運びが容易なトロリーケースは幅をきかせています。しかしその利用者には上記のような不心得者もいるのです。結果、荷物の収納や取り出しが遅れて定時運行に支障も出始めています。チェックインカウンター、手荷物検査場、搭乗口、と何度もチェックポイントがあるはずなのに、どうしてこんなことになるのでしょう。

 航空会社、地上係員とも、本来のルールは厳守させるのが役割のはず。こういう不心得な輩は、一度認められれば次回以降「このあいだ乗ったときはOKだったもん」と錦の御旗のごとくに前例を吹聴するハズであります。お客様と言えども、言うべきことはピシッと言うこと、ルールにたがう輩をきちんと「教育」することも、正しいサービスの一環なのではないでしょうか。

予定では、きょう8日は北京にいるハズですが…。時間の制約から荷物は預けず、最小限の手荷物だけで飛行機に乗り込む予定。私は無事に到着出来ているでしょうか。


#181「やわらかアタマ」

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ウィングレット

 トヨタが新しい乗り物「ウィングレット」を発表しました。二輪のゴムタイヤの上に、小さな足乗せ。真ん中にバッテリー。最高時速は6キロと、ちょっと早歩き、という早さです。
 不思議でしょう?運動オンチの私でもふらつくこと無く、安定して直立、スムースに動きます。足の指の付け根あたりにちょっと意識を集中すると、スーッと前進。何となく後ろの方に意識を向けると後進します。左右へ曲がるのも体重移動、ちょうどスキーの要領です(…って雪国生まれのくせにロクに滑れない私では説得力が乏しいのですが)。センサーと姿勢を制御する仕組みの賜物です。乗り方の基本は一緒なのですが、前部に手を添えるT字形バーのあるタイプ、膝丈の短いバーがあるタイプ、そしてほとんどバーが無いタイプの3バリエーションがあります。

ウィングレット ウィングレット
ウィングレット 坂道もスイスイ

 坂道もスイスイ。20°の勾配も安定して上り下り。まったく怖さはありませんでした。もちろん途中で停まったり、戻ったりも意のままです。


ウィングレット 凸凹道もクリア

 凸凹道もクリアしましたので、これは完成度が高いと太鼓判を捺すしかありません。
 とくにT字形のバーが有るタイプは、中高年でもより安心して乗れるのが特徴。実際には両手を離して乗っても大丈夫という安定感がありますからね。バーが短くなるほど、スポーツ感が高まります。スケボーやインラインスケートのように、これを使った競技もやれそうな感覚です。


ウィングレット 持ち運びも

 開発チーム曰く、「中で外で、移動することの愉しさ」を追求したそうです。持ち運びも容易なので、将来的には駅まで「ウィングレット」、電車に持ち込んで降りたらまた「ウィングレット」という使い方も考えられます。また、これまで例えば半径1キロだった徒歩圏が2キロに、3キロに拡がる可能性もあります。車に積んで郊外へ出かけ、自然豊かな遊歩道をコレで静かに楽しむ…なんて使い方もできそうますね。あなたはどう使いますかと言われたら…アタマのやわらかさが試されそう。使い道についてはきっと開発者も思いつかないアイディアが出てくるのでしょう。

ウィングレットに乗る

 ま、当面は、広い空港のターミナル間の移動、ショッピングモールや工場などでの活用、など閉じられた空間での利用が主に考えられています。しかしそれだけではもったいない!もし公共交通が乏しい地域で使えたら、お年寄りももっと市街地に出ていけます。サイズが小さく携帯できるので、都市部では駅前の放置自転車も一掃できそうです。それにはとにかく「公道での使用」が法的に認められることが必要。国土交通省や警察など、お上のかたいアタマをぜひやわらかくしていただきたい。夢の膨らむ乗りものでした。


#180「自画自賛」

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  『リアルコンノ』、そして乗りもののブログ『乗りもノート』のために、あちこちで写真を撮影していると、それなりの枚数が溜まってきます。改めてそれらを見返すと、我ながら「よく撮れたんじゃないか!?」言いたくなるショットが出てきます。
 きょうの一枚はそんな写真です。青い空、黒々とした船体、日の丸…。携帯で撮ったわりにはキレがいい感じです。同じような構図で船の前部から撮れたら文句なし、なんですが。

氷川丸

 被写体は。はいご存知ですね。みなと横浜のランドマークの一つ、氷川丸です。山下公園から見る黒い大きな姿は、この港には欠かせない風景の一つになっていますよね。この船を私が最初に知ったのは小学生の頃。プラモデルの図鑑を見ていたときでした。今のような姿と、戦時中、軍に徴用・改装された「病院船」時代の2種類が掲載されていた記憶があります。「病院船」というのが子供ながらに強い印象を残していたんですね。
 大型貨客船としては北太平洋航路を中心に活躍していたわけですが、この春からは一般公開もされているようです。往時の船旅とはどのようなものなのか。夏休み、燃料代高騰で海外は遠のくばかり。せめて氷川丸でその気分だけ味わうのも、悪くないのでは?また自画自賛できる写真が撮れそうです。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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