#186「鉄道本 2」
前回に続いて鉄道ものの本をご紹介。中公新書の「電車の運転」(宇田賢吉・著)であります。これはスゴイ。何といってもそのものズバリのタイトル。そして下に巻いてある帯には「ようこそ、運転室へ」というキャッチーなコピーが。
鉄道にまったく関心のない、弊社の先輩にこの本を見せたときのリアクションが面白かったのです。表紙を見るなり「ようこそ、って誰に言ってるのよ」。私の理解では鉄道好きの人、全然興味のない人、すべてを含みます。間口の広い本です。
そして第1章の1「鉄道の長所と短所」の冒頭に目を通す…そこにはこう書いてあります。「最初に、鉄道の長所と短所をおおまかに説明しよう」「まずは鉄道は線路という専用通路を走ることでマイペースの運転が可能であることを、長所として挙げよう」これを読んだ先輩いわく「マイペースの運転って、鉄道がマイペースじゃまずいでしょ」とひと声。そう。「マイペース」の意味は本書を読み進むにつれわかるのです。
この本、実際に運転士だった人が実地の経験をもとに、じつに細かく鉄道の仕組み、電車の仕組み、運転の仕組み、を説明していくのです。最終章は「運転士の思い」というタイトルですが、そこに至るまでに、運転士の心理というのはわかった気になる、それほど仔細に鉄道という輸送手段のシステムとオペレーションを紹介しているのでありますっ。「っ」と息が荒くなるぐらい。いやあ、確かにスゴイ。
何がスゴイって、中身もさることながら、中公新書がこういう本を出すということ。今やそういう時代なのですね。本体のお値段840円。以前に取材現場でお世話になった、中央公論新社の担当者に問い合わせたところ、「大好評ですでに軽々と5万部を突破、増刷を繰り返している」とのこと。鉄道ブームの大きさを感じるじゃぁないですか。