2008年7月アーカイブ

#179「目からウロコ」

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 ホンダのFCXクラリティのお話、続きます。試乗した私に周囲の皆さんが聞いてきた質問はだいたい決まっていました。

ホンダのFCXクラリティ

Q:意外に大きいサイズ(大型車並み)だけど、パワーは足りるの?走りはどうなの?
A:電気モーターの特性で、加速、巡航性能ともに一般のドライバーには有り余るぐらいでした。しかもガソリン車と違い超静粛!気持ちよいことこの上なし。

ホンダのFCXクラリティの運転席Q:低くカッコいいフォルムだけど、室内は狭くないの?
A:電気モーターはとても小さいので、ボンネットも超小型。エンジニアに伺うと、軽自動車用のエンジンでも入りきらないぐらいだそうです。そうしてボンネット部分を小さくまとめられたので、そのぶん室内空間は余裕たっぷりでした。独立した4つのシートは、どこも心地よい包まれ感があると同時に、明るく視界が開けて快適。



ホンダのFCXクラリティの乗り心地Q:乗り心地は?
A:環境に優しいバイオ繊維で作ったシートは、内部に冷暖の温度調節機能まで付いています。そしてとにかく静か。ハイスピードで走っていても、ささやくような小声で会話が楽しめます。この静かさはドライブが長距離になるほど、疲れを大幅に低減するはずです。



Q:で、欲しいと思った?
A:21世紀の環境に配慮した新しいシステムを目一杯に取り入れて、しかも車の愉しさをまったく犠牲にしていないというのが、この燃料電池車の強みだなと素直に実感できました。一つ一つの構成要素に目からウロコ。水素を補充するインフラの整備がほどほどに進めば、そして値段がぐんと下がれば、誰もが購入を検討したくなると思います。地球に優しいだけでなく、所有することの喜びや誇らしさも満たしてくれそう。

一世代前の燃料電池車「FCX」それにしても、やっぱり車って「見てくれ」も大事ですね。この「クラリティ」の一世代前の燃料電池車「FCX」のスタイルはあまりに凡庸で、中身の革新性がアピールし切れない感じがしましたもん。

その点デザインスケッチがそのままカタチになったような「FCXクラリティ」は、誰の目にも新しさと機能性とカッコ良さが感じられます。10年以内に1000万円を切ることが目標という価格が問題ですが、技術の進歩が著しい分野なので、一つのブレークスルーで劇的に安くなる可能性もあります。一日も早く、多くの燃料電池車が街の風景と空気を一変することを期待します。


#178「長距離」

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今度は長距離、の話題です。ホンダの燃料電池自動車「FCX CLARITY」(クラリティ)に乗る機会に恵まれました。燃料電池、ご存知ですか?水素と酸素を化学反応させて電気を生む。その電気でモーターを回して走る車です。

 

ホンダの燃料電池自動車「FCX CLARITY」(クラリティ)

ツヤツヤと輝く3日前に日本でのナンバープレートを取得したばかり、しかもこの試乗の後に洞爺湖サミットでのエコブースに出展する「超レアもの」の車です。現時点で値段を付けるとしたら、一台ウン千万円!…試乗に先立って「運転にあたって特別に注意することはありますか?」と、開発責任者に尋ねると、「運転操作の上では何にも特別なことは有りません。とにかく事故のないように、無事に戻って頂くことが注意事項ですね(笑)」との返事。ハイ。気を付けます。

 

何しろ魅力的なレアものですから、周囲のドライバーもよく見てみようと車を近づけてきます。アクシデントの無いよう最善の注意をしながら出発!


ホンダの燃料電池自動車「FCX CLARITY」(クラリティ)

で、なにが「長距離」かというと、その航続距離。燃料である水素タンクを満タンにした状態で、620㎞も走るんです(10・15モード走行測定値)。

単純に外部から充電して、その蓄電だけで走る電気自動車は、まだまだこれほどの長距離を走ることはできません。まだ都市部の街乗り用、という印象を払拭できていません。

しかしこのクラリティは、一度水素を満タンにすれば、従来のガソリン車と同等かそれ以上の距離を一気に走ることができます。

しかもその際のエネルギー効率は3倍以上!ゆったりとして静かな(停止すれば無音状態)室内と、乗り心地の良さも相まって、ホントに遠くへ出かけたくなりました。

残念だったのは試乗コースが限られており、当たり前ですが長距離ドライブには行けなかったこと。そんなチャンスが早く来るといいのですが…。


#177「短距離」

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前回紹介した穴守橋。欄干そのものには、空の乗りものの歴史が刻まれています。数メートルおきに、名機の雄姿が刻まれたプレートが取り付けられているのです。

 

モンゴルフィエの気球.jpgスピリット・オブ・セントルイス号.jpg

 

YS-11.jpg

 

最初はモンゴルフィエの気球(1783年)。リンドバーグが大西洋を横断したスピリット・オブ・セントルイス号(1927年)、日本国内での営業飛行から退役したYS-11(1962年)など。短いようで意外に長い空の歴史です。

「長い」話のついでに「短い」話を。この穴守橋、地図で見ると国道131号の標示があります。都心に近いわりにはあまり馴染みのない数字の国道。調べてみたら、総距離わずか3.8㎞しかない短い国道のようです。羽田空港から国道15号の交差点まで。ちょとしたジョギングでも20分ぐらいで完走できますね。

これはもしや「日本一」の短さかと思い、さらに調べると、まだまだ上があるんですね。これら短い国道に共通するのは、重要な港湾や飛行場からその都市の中心に向かう道だということ。羽田空港から車でこの131号を走ると分かりますが、穴守橋は羽田から最初の橋。東京へのゲートみたいなものです。短い短いアプローチながらとても重要な道と、長い歴史を刻んだ趣のある橋。131号はなかなか味のある国道であります。


#176「オブジェ」

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公共の建造物の中には、ちょっと変わった意匠を施したものがあります。今回はそのひとつ、穴守橋です。

 

飛行機のオブジェ.jpg

欄干の端、4か所には空高く飛翔する飛行機のオブジェが。円弧の先に飛び立とうという飛行機は、どうも超音速機のように見えます。水平尾翼は無く主翼のみ、その主翼も非常に大きいスタイルはまさにコンコルド。そう古い橋ではないのですが、あえてコンコルドっぽいデザインを採用したセンスはGOODです。

 

取材の道中、出張の行き帰りなど、この橋を渡るたびになかなかのデザインだなあと感心していた私であります。今回初めて歩いてこの橋を渡ってみました。

 

 

飛行機のオブジェ2.jpg

東京モノレール、京浜急行の天空橋駅からすぐのところにあります。橋の下には漁船が何隻か見えました。昔ながらの漁師さんたちがまだこの地域には居るのでしょう。江戸前の海の幸をもたらす船は、空の歴史をかたどった欄干の足元に停泊しています。空と海の乗りものの邂逅ですね。


#175「マーク」

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シンボルマークというものは、容易には変えられないものです。たとえば郵便局のマークが例の「〒」でなくなったら…ちょっと考えられないですよね。そこできょうはこのマーク。

   

東海道新幹線.jpg

新幹線の表示です。東京駅の天井にぶら下がっている案内板です。電車好きの方でなくても、こんなかたちの新幹線はほとんど見られなくなっていることはご存じでしょう。東海道・山陽新幹線の0系、東北・上越新幹線の200系です。

 

古式ゆかしい、というか懐かしい昭和のデザインであるこの丸っこい車体、もはや風前のともしびです。でも新幹線といえば、まだこれなんでしょうね。700系やN700系、E2系やE4系の正面がデザイン化されたとして、万人に「新幹線」と認知してもらうにはまだ時間がかかりそうです。

 

 

上越新幹線.jpg

そもそも、ひとつ前の文でお分かりのように、もはや新幹線といっても多種多様。ひとつの車両にすべてを代表させるのは困難な状況です。20年後、東京駅のこの看板にはいったいどんなシンボルマークが描かれていることでしょう。

   


#174「試乗会 2」

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試乗2_a  完全にうっとりしています。発売されたばかりのクルマの中、助手席です。ノラ・ジョーンズの歌声に聴き惚れています。純正のカーオーディオでこういういい音が楽しめるのか…と。

 試乗会場のイベントホールでは、普段なかなか知ることのない、クルマの内装の開発にかかわる展示&説明がおこなわれていました。

 

 

 

 

 

 

試乗会2_b 驚いたのは、車内の多くの部品にプラスチックや樹脂がつかわれていること。しかもそのプラスチックがまったくプラスチックに見えないところであります。一見すると艶消しアルミのようなドアノブも、半袖のポロシャツから出た腕が気持ちよく当たるスエードのようなひじ掛けも、皮革のような柔らかみのある質感を出したドアの内張りも、みんなプラスチック。小学生のころ使った歯磨きのコップや絵の具の筆洗などとは対極にある、「プラスチッキー」ではない上質さです。

試乗2_c エンジニアの話では、「人が気持ちよい、心地よいと感じるのはどういうことなのか、徹底的に研究しています」とのこと。触覚や視覚、脳の認知みたいな分野を日々研究し、そのデータをもとに新しい材料を開発しているんですね。しかもそれは定められたコストにおさめ、ユーザー任せの使用条件下で5年、10年劣化しないという耐久性を持たせなければなりません。まあ一言でいって自動車会社がそこまで研究するのか、と感じ入りました。そういう研究の成果を外部に切り売りしても相当なビジネスになるのでは?・・・と僭越ながら常務にも申し上げたぐらいです。

試乗会2_d モノ作りの現場のお話はなんでも興味深いもの。ディレクターのO君が腕を差し入れているのは開発中のエアコンフィルターの展示。水の分子にビタミンCの分子を結合させて車内に送風すると、ありがたや。お肌の乾燥が防げるというのです。カラカラになりがちなエアコン使用時も、女性のお肌は守られるという按配です。そこまでやるのね…。五感にわたる快適さ。まとめると、「うちに居るより快適かも」という、夢のような話になってきます。で、帰宅するとやっぱり「車のほうが快適だった」という現実が…。ははは。


#173 「試乗会 1」

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4月につづき、またもテストコースにて試乗してきました。

横須賀にある日産の「GRANDRIVE」です。

日産の「GRANDRIVE」

去年新装なったばかりのコースは一周およそ4キロ。高速道路をイメージした直線、連続するカーブや劣化した舗装路など、公道にみられるさまざまな状況が盛り込まれ、変化に富んでいます。大学では自動車部に所属していたクルマ好きのOディレクターと勇躍横須賀へ。

GTR-Red

まずは去年発売され世界のメーカーに衝撃を与えた「GT-R」の試乗から。
 

「GT-R」の試乗

開発責任者の水野和敏さんの説明によると、この車の心臓であるエンジンは
12人の匠によって仕上げられ、その精度は発売以降ますます磨かれているとのこと。480psを謳うカタログスペックのわずか±2psにおさまっているとか。人の手が個体差、バラつきを抑え込み、すべてのユーザーに完全な状態で納車しているわけですね。

 そのGT-R、私は前回ゴーン社長と都内をドライブしましたが、今回はテストコースとあって、さまざまなシチュエーションが体験できました。

去年新装なったばかりのコース

中でも印象に残ったのがフル加速。いったん停止してからアクセルをぐっと踏み込むと、体の中身が置いて行かれるような強烈な加速であっというまに150キロ近くまで。そこから今度はフルブレーキ。まったく姿勢を乱さず、何事もなかったように短い距離で止まりました。何しろ誰でもいつでもどんな状況でも楽しめるスーパーカー、というのがコンセプト。確かに自分の運転技量がグンとアップしたような気持にさせられます。

 とはいっても、21世紀のスーパーカーは環境への配慮も忘れてはいけません。時速200キロの領域までクリーンな排気を実現するなんていう芸当もその一つ。クルマ好きが後ろめたさを覚えずに乗れる、そんな時代のハイスペックなんですね。


#172「鉄道×スイーツ」

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080622ekurea.jpg

しつこく副都心線ネタです。早稲田のホテルでこんなエクレアを発見しました。東京メトロの電車をモチーフにしたエクレアざんす。どうも副都心線の開業(西早稲田駅の開業)にあわせて作ったようです。鉄道とスイーツが好きな私にはたまらない新商品。色とアルファベットは路線を象徴しています。画面左は東西線。右は有楽町線ですよ。有楽町線は副都心線とともに、今回東武や西武の電車が乗り入れる路線として、東西線は最寄りの早稲田駅がある路線として、それぞれ選ばれたんでしょうね。ブルーのコーティングはいったいどんな味がするんでしょうか。こんど買ってみましょう。 

 

 

 ところで副都心線のエクレアは?お店の方に聞いたところ、早い時間に売り切れたそうです。私、この写真撮ったのは午後1時半なんですけど・・・。ほんとは東西線の左にずらっと「停車」していたみたいです。

 もひとつ、ところで。鉄道&スイーツといえば、忘れてはならないのが「都電もなか」。ホテルのすぐ近くから都電に乗って、梶原停留所で下車するとすぐのところにそのお店が。いずれホテルのエクレアも、もなか並の名物になるのでしょうか。

 


#171「超コンパクト・2」

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エコと一口に言っても、じつにいろんな局面があることを考えさせられました。前回に続きトヨタの超コンパクトカー、iQの話です。走行距離あたりの二酸化炭素の排出量は、プリウスをしのぐそうですよ。

 

toyotaiQ.jpg

でも、そのことより私が膝を打ったのは、開発責任者のお話でして。あるひとつの車種が、走るうえでの燃費がいいとか、二酸化炭素の排出が少ないとか、その尺度で個別にエコ性能を達成しても、その車を作るためのインフラ、ソフトもエコでなければ、意味がないというのです。たとえばできるだけ既存の生産設備の範囲で、新たな環境負荷をかけずに作り、流通させるというのもエコ性能の要素というわけですね。その点もかなりの自信がうかがえました。会見などでは明言しなかったそうですが、「生産段階」で「へえ!」と驚くようなエコ性能を持っていることも明かしてくれましたよ。

しかし開発が始まったときには、まさかここまでガソリンが値上がりするとは思わなかったはず。21世紀の自動車メーカーは、一にも二にも環境性能を高める総合力が必要。加えて、先を読む、時代に乗る力も必要なんですね・・・。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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