#179「目からウロコ」
ホンダのFCXクラリティのお話、続きます。試乗した私に周囲の皆さんが聞いてきた質問はだいたい決まっていました。
Q:意外に大きいサイズ(大型車並み)だけど、パワーは足りるの?走りはどうなの?
A:電気モーターの特性で、加速、巡航性能ともに一般のドライバーには有り余るぐらいでした。しかもガソリン車と違い超静粛!気持ちよいことこの上なし。
Q:低くカッコいいフォルムだけど、室内は狭くないの?
A:電気モーターはとても小さいので、ボンネットも超小型。エンジニアに伺うと、軽自動車用のエンジンでも入りきらないぐらいだそうです。そうしてボンネット部分を小さくまとめられたので、そのぶん室内空間は余裕たっぷりでした。独立した4つのシートは、どこも心地よい包まれ感があると同時に、明るく視界が開けて快適。
Q:乗り心地は?
A:環境に優しいバイオ繊維で作ったシートは、内部に冷暖の温度調節機能まで付いています。そしてとにかく静か。ハイスピードで走っていても、ささやくような小声で会話が楽しめます。この静かさはドライブが長距離になるほど、疲れを大幅に低減するはずです。
Q:で、欲しいと思った?
A:21世紀の環境に配慮した新しいシステムを目一杯に取り入れて、しかも車の愉しさをまったく犠牲にしていないというのが、この燃料電池車の強みだなと素直に実感できました。一つ一つの構成要素に目からウロコ。水素を補充するインフラの整備がほどほどに進めば、そして値段がぐんと下がれば、誰もが購入を検討したくなると思います。地球に優しいだけでなく、所有することの喜びや誇らしさも満たしてくれそう。
それにしても、やっぱり車って「見てくれ」も大事ですね。この「クラリティ」の一世代前の燃料電池車「FCX」のスタイルはあまりに凡庸で、中身の革新性がアピールし切れない感じがしましたもん。
その点デザインスケッチがそのままカタチになったような「FCXクラリティ」は、誰の目にも新しさと機能性とカッコ良さが感じられます。10年以内に1000万円を切ることが目標という価格が問題ですが、技術の進歩が著しい分野なので、一つのブレークスルーで劇的に安くなる可能性もあります。一日も早く、多くの燃料電池車が街の風景と空気を一変することを期待します。