2008年6月アーカイブ

#170「超コンパクト・1」

|

 車は最低限どれだけのサイズがあればいいのでしょうか。そんなことを考えさせられる新車です。トヨタのiQ。全長はわずかに3mを切るボディ大人3人と子供1人の4人を乗せられるコンパクトカーです。

080627toyota.jpg 開発責任者にお話をうかがうと、最初に与えられたテーマは「パッケージング」の追求だったそうで。とにかくありとあらゆるものを小さく作れば新しいパッケージングが生まれると。いわく、「開発にあたってよく使われた言葉に「オリ」というのがあるんですね」「ええ、動物のオリと同じ、オリです」・・・たとえばエアコンのユニットは縦横高さ何センチの中におさめる、そういう枠(=オリ)を決めてすべてにとりかかったそうです。それは各部門の開発に相当の知恵を絞らせたことでしょう。

 結果として、助手席側のダッシュボードがぐっと前進。 後席に大人をもうひとり乗せることに成功したわけです。しかし成功したのは単にこの車だけではありません。それだけあらゆるものを小さく作れるということは、通常サイズの車にもその技術を応用できます。車の世界は小型化・軽量化が次へのステップボード。今回この車で培った技術は、見えないところで、次のトヨタ車に生きてくる可能性、大です


#169「副都心線」

|

いよいよ。開業しました副都心線。6月11日のリアルタイム動画ブログ「生放送終了後のキャスターCatch!」で懸念した通り、最初の1週間でダイヤの乱れが問題になったようです。私の心配した通りです。やはり小竹向原の駅を中心にして、X型に列車の運行が振り分けられる点がネックになっているようですね。

 

080618hukutosshin1.jpg

 これを機会に考えてみてはどうでしょうか。本当に「相互乗り入れ」は便利なのかということを。地下鉄と郊外の電車と2社で相互乗り入れする程度ならいいのですが、地下鉄の両サイド、3社で相互乗り入れとなると、俄然運用やダイヤの設定・回復が厳しくなってきます。

 

080618hukutoshin2.jpg

 例えば。小田急の新百合ヶ丘あたりに住み、千代田線直通列車に乗ってJRの我孫子、柏あたりまで毎日直通するお客さんの割合はどれぐらいなのでしょうか。埼玉の久喜市から東武線に乗ろうというとき、「東急田園都市線のつきみ野駅付近で、強風のため架線にトラブルがあり、東武線のダイヤが…」とアナウンスされて心から納得できるでしょうか。100㎞近く離れた街での小さなトラブルが、東京都心を挟んだはるか反対側にまで大きく影響するとしたら。それは本当に便利なのか、そこまで便利を追求する必要は本当にあるのか、ということになります。

 

 

 

 「A社→地下鉄→B社」の3社の乗り入れも、A社、B社の乗り入れ範囲は地下鉄線内ぐらいにとどめておくほうが、不測の事態の対応がしやすいのでは。副都心線の開業に、そんな大きなことまで考えてしまうわたしであります。それには課題がひとつ。地下鉄線内の「折り返し用設備」が絶対的に足りません。ううむ。


#168「ホバー」

|

 世にあまたある乗りもの。いまだ乗ったことが無いカテゴリーは結構あるものです。雪上車、潜水艦、飛行船…。ま、用途が特殊で乗る機会に恵まれないものが殆どですが、乗ろうと思えば乗れるのに、まだ…、というものもあります。そのひとつが「ホバークラフト」080604hover1.jpg

   日本では大分空港への連絡交通手段として多数の便が運航されています。ご存知の通り、ホバークラフトは強い空気を下に吹き付けて浮上し、さらにプロペラを回して推進していくという、なかなか豪快な乗りものであります。この乗りものの運動特性のひとつは「ドリフト」つまり横滑りをすることでしょう。大分では発着場の立地上、横滑りをするのが前提となるコースを走るため、客室内には初めてのお客さんが不安にならないよう「但し書き」もあるって聞きましたが、本当でしょうか。

080613hover2.jpg

  これに乗った人はかなりの強い印象を残されるようで、ここ数か月の間にも「近野くん、こないだ大分で…」「乗りましたよー、ホバークラフト」「大分に行ったときにね…」という「ホバー報告」を何度か受けたほどであります。一様に、その話しぶりは浮き浮きしてちょっと高揚しています。浮き上がって進む、ホバークラフトとよく似ています。


#167「献血車」

|

乗っても動かないことが前提の乗りものです。献血車。横浜の港を望む公園で、行き交う人に献血を呼びかけていました。ここまでは当然、自走してやってきて、終了するとまた自走して去っていきます。

 

080601kenketsu.jpg

 献血車はいちど場所を決めて停車すると、あとはひたすら篤志ある人がやってくることを待つわけです。考えてみると、乗り込んで献血を申し出ると、あとはしばらくじっとしていなければなりません。車も人も、じっとしていることが大前提という乗りもの、ほかに何か思いつくでしょうか?

とはいえ、動く機能は必要です。それが無ければこうして公園や学校に出向いて献血を呼びかけるコトが出来ませんから。車として動く機能が無かったら、「献血車」改め「献血舎」になってしまいます…。動くことや乗ることを楽しむわけではない大切な乗りもの。きょうもどこかで活動していることでしょう。


#166「デラックス」

|

 

080523ariake2.jpg

熊本までの往路、特急で熊本に入りました。時刻表を見ると、自分が乗ろうとしている博多発の列車には「DXグリーン車があります」との表記が。「DX=デラックス」ですよ。なんとも昭和な響き。いまなら「プレミア」とでもいうべき言葉でしょう。

 

さっそくネットで調べると、確かに「デラックス」との形容が相応しい豪華なしつらえです。グリーン車に乗り込むと、なんだかダイニングバーのようなデザインの通路が、客室に向かい延びています。じつはこの左側には、4人乗りの個室もあるんですねー。

 

 

で、突き当たりの扉を開けた通常のグリーン席がこちら(↓)。これだって左右に2列-1列、前後の間隔もたっぷりとってあります。

 080524ariake10.jpg

 

しかしデラックスグリーン車はこんなもんじゃありません

コレですよ。

 

080523ariake5.jpg

シートは茶色の市松模様。身長178センチの私も悠々と横になれるこのリクライニング角度!まったく前後を気にする必要の無い、圧倒的な前後のゆとり。背もたれ、レッグレストともに電動ゆえ、右のひじ掛けに内蔵されたスイッチでウィーンと自由自在です。通常のグリーン車の端の部分に、ちょっとした仕切りがあって、その前にわずか1列3席のみ。まさにデラックス!自腹を切った甲斐がありました。おかげで安らぎました。ただ一つ無念なのは、夜間の移動だったので、何も車窓が楽しめなかったこと。これだけのサイズの窓を独り占めしたというのに…。無念であります。次回は昼だ!


#165 「市電」

|

 前回につづき。熊本の市電についての考察です。車両のバラエティが豊富だと先回申し上げましたが、今回の写真はそんなショット。080525shiden7.jpg

 右が従来の車両、左奥に見えるのが新しい車両です。熊本県警の「ゆっぴー」というキャラクターが車体にあしらわれた「ゆっぴー号」。これは日本で初めての「超低床路面電車」なんですね。10年前に登場したこの車両は、優れたデザイン・技術などを盛り込んだ車両に贈られる「ローレル賞」を受賞しました。

 時間に余裕がなく短時間ではありましたが、試乗ができました。辛島町から熊本市交通局前までの往復です。なぜ交通局前までにしたのか。それには理由があるんです。以前読んだ本に、熊本市電では交通局前停留所で行われる運転士の交代時に、運転士は車内に一礼、車内の乗客も多くが一礼すると書いてありました。それを確認しようという趣向です。事実としたらちょっといい光景じゃないですか!果たしてその結果は…

 

 交通局に到着する電車。私は下車して運転士が降りてくるのを待ちます。が。この電車は乗務員の交代無し!すぐ次にやってきた電車は…お!交代です交代です。下車する運転士がドア付近でちょっと一礼。乗り込む運転士もドアに入ると、ちょびっと頷きました。乗客のリアクションは…う、下車すると意外に窓が高いところにあり、見えません。無念です…。

 

 帰路はたまたまやってきた「ゆっぴー号」。これは2両連結で、後部車両には女性の車掌さんがいました。滑るように街を駆け抜けるゆっぴー号。数分間の小さな旅ですが、じつに快適でした。

 

 

080525shiden8.jpg


2008年6月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

プロフィール

近野さんポートレート
近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

more

このアーカイブについて

このページには、2008年6月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2008年5月です。

次のアーカイブは2008年7月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。