2009年2月アーカイブ
首都高速の晴海線が開通しました。この開通当日の午前に取材に行くと、本線上にカメラクルーとともに上ることができました。これからお世話になるであろう真新しい道路は、アスファルトが黒々としているうえ、路上表示のペイントもツヤツヤ。しかし自分の足で坂道を上ると、けっこうな長さと傾斜…海に近いですし、寒風も身にしみました。
湾岸線から豊洲に向かうわずかな距離の路線ですが、晴海・築地方面に行くには便利になります。浜崎橋や箱崎の慢性的な渋滞も緩和されるであろうという触れ込み。実際に検証しても、勝鬨橋付近が渋滞していなければ、スムースに都心部へアクセスできそうでした。で、ことのついでにわたくし、首都高速の別の新規路線も見てきましたよ。
はいこちらが中央環状線「大橋ジャンクション」の建設現場です。どれが?って、真正面のこのコンクリートの円い要塞のような建造物が。新宿方面から山手通りの地下を南に延びてきた高速道路は、東西に走る3号線とここでつながります。しかしその3号線は、はるか高みをゆく高架線。このジャンクションは地下と空中を結ぶ「巨大な渦巻き型」なんですねえ。いずれこの中をぐるぐると車が行き来するわけです。なんでもこの屋上には公園もできるそうで。これは自分の足でてっぺんまで登るとしたらけっこうな運動ですぞ。
船の科学館にはおそらく日本の博物館でも最も大きな部類に属する「展示物」があります。青函連絡船として活躍していた「羊蹄丸」です。長さ132m。船内は改装されてさまざまな展示スペースがあるのですが、今回の注目点はそのスクリュー。船体から外された立派なスクリューが岸壁に展示されているのです。
どれどれ…4枚羽根のいかにも堅牢なスクリューは重さが6トンあるそうで。なるほど立派でございます。しかしふと気になったのはその大きさ。直径が3.25mですって。全長132mに対して3.25m。全長のほぼ40分の1、のサイズです。羊蹄丸のスクリューは2つあったそうですから、船体を、「泳いでいる人間」に例えると左右の足、みたいなものですよね。それが体長の40分の1、にすぎないサイズなんです。
私の身長が178センチですから、その40分の1というと、足は4.45センチになってしまいます!もし自分の足がこのサイズなら、とてもすいすいと泳げそうにありません。ちなみに私の足は26.5センチか27センチですから、足を基準にして羊蹄丸的な倍率にすると、私の身長は10m!となります。スクリューは小さいけれど力持ち、だったんですねえ。
日本テレビから5分ほど歩いた汐留の「イタリア街」の真ん中は、三角形の公園になっています。公園といっても、大がかりな植栽や遊具があるわけではなく、石畳とベンチ、それに周囲を巡る歩道沿いに街路樹があるだけ。まさにイタリアなどヨーロッパに見受けられる、街の中心となる「広場」というのがより適切でしょう。日本古来の庭園とも、いわゆる都市部の公園とも違う、いい雰囲気です。
この公園、足を踏み入れると気づくのが、円く石で縁取られた一角。これも「ターンテーブル」の遺構なんですって。ご存じのとおり、汐留にはかつて旧新橋駅があったわけですが、その中には機関車の向きを変えるためのターンテーブルもあったと。当時は言うまでもなく、機関車といえばすなわち蒸気機関車ですから、今の機関車と違い両側に運転台がありません。大正3年前後までぐるぐると方向転換に使用されていたそうです。その基礎石を再利用してモニュメントとしたわけですね。
乗りものの世界は「向きを変える」ことがよくあるわけですな。しかし当コラムは今後も向きを変えることなく、このまままっすぐ進行を続けてまいります。今後もお付き合いくだされ。
先日の#233で、サンフランシスコのケーブルカーがどうやって向きを変えるか、いしかわじゅんさんの写真をご紹介しました。手押しのターンテーブル、でしたね。今回はとあるバス車庫での一枚です。この写真で見える横幅が、ほぼこのバスターミナルの横幅と同一です。つまり、頭から入っていくと出るときにはバックせざるをえません。そこでこのターンテーブルがあれば、狭い場所の制約から解放されますよね。撮影時に時間があれば、実際にバスがぐるりと向きを変える様子が見られたのでしょうか…。
都市部では場所が狭いバスの終点があちこちに見受けられます。とくに、駅から少々離れた住宅街、団地あたりが起終点の路線だと、こちゃこちゃっとした住宅密集地にいきなりぽつんと折り返し所があって、バスが一日に何度となくぐるぐる回るのですね。都会というのはわれわれの意識にまったくのぼらないところで、思いがけない作業が日常になっている。初めて訪れた街でこれを見たら私は「ラッキー!」と思うのであります。バスにも乗り物にも何も興味のない人がその様子に出くわしたら。どうなんでしょう?やっぱり乗りもの好きって変なんでしょうかね。
白い革張りのラウンドしたシート。さまざまなグラスが棚の中に見えます。昼間に窓を開けてみた高級クラブか?ずいぶん豪勢なカラオケ?と見紛うところであります。しかるにこれが車の中、なんですね。その車がこちら。
ん?なんだ。一部に熱烈なファンを持つアメリカの四輪駆動車「ハマー」じゃないか。あの無骨なスタイルの、ちょっと寸詰まりにも見える車の中のどこに、こんなスペースがあるのよ!?と思いますよねえ。ところがこのハマー。ものすんごい足が長いのです。それがこちらの写真。
…はいよく画像処理しましたねぇ…と言われそうですが、れっきとした本物、実車を実写した写真ですので。全長9m。ずいぶんストレッチ改造しましたねえ。日本テレビに程近いレンタルリムジン・ハイヤー会社の前で撮りました。折り目正しい制服に身を包んだ綺麗な女性が2人、ちょうど運転席と助手席に乗り込むところ。これ幸いとお話を伺いました。イベントや結婚式の2次会、海外からの賓客の送迎などに活躍するそうです。この会社はほかにもセダンタイプのリムジンなど、何種類もの車を持っていることが判明。ちょうどこれから車を下見したいというお客さんのところに向かうとか。どんなお客さんなんでしょうねえ。
私の「定番バスウォッチスポット」、銀座8丁目付近で見かけた観光バスです。真紅の車体に黄色&オレンジ&赤のロゴがインパクト大。…なになに。「KOMBINAT BUS」…大阪コンビナートバス!なかなかその名前も強力ですね。はるばる大阪からお越しとは。
それにつけても「コンビナート」って、あの「コンビナート」ですよね。石油化学の工場みたいに原料から製品までさまざまな施設が建ちならぶ、あれ。バス会社の社名の由来というと、地名や親会社の名前以外には「花鳥風月」「その土地の名勝」みたいな方向性が強いような気がしますが、「コンビナート」。オリジナリティが溢れる会社名です。いまネットで調べると、この「大阪コンビナートバス」は大阪の岸和田市に会社があるようです。
なるほど岸和田には海の埋立地にコンビナートがあるようで。そして岸和田といえばあの勇壮で華麗な「だんじり」。…と考えると、このバスの鮮やかな、勢いのあるカラーリングにも納得です。
ところでコンビナートということば、「結合」を意味するロシア語だそうです。乗りもの好きの目を引くバスを見かけたおかげで勉強になりました。まさに趣味と知識の結合!
漫画家のいしかわじゅんさんからメールが届きました。「取材でサンフランシスコに出かけた折に、ちょっとだけ時間ができたので、雨のなか街歩きをした」とのこと。その折に撮影した、かの街の代名詞ともいうべき「ケーブルカー」の写真を添付してくださいました。
とんでもない急な坂を行き来するケーブルカーは、運転台が片方にしかない構造上、終点に着くと、ターンテーブルの上ぐるりと方向を180度反転します。その作業が、じつは「手押し」というのが味なところですよね。いしかわさんもその作業を意外な発見として写真におさめたようです。
しかし、メールをいただいた週末に自宅で古いアルバムを手繰ってみると、「あ、やっぱり!」と今度は私が驚きました。おんなじようにおじさんが車両をよいしょと回転させている写真があったのです。日付は1988年の7月30日。撮影者はほかならぬ私であります。ホームステイでイリノイ州に向かう途中立ち寄ったサンフランシスコでの1枚でした。いやぁ…やはり乗りもの好きは同じような興味をもつというべきか。
ところでいしかわさんからの写真を見ると、この車両は当時とまったくといっていいほど変わっていません。21年前の時点ですでに完全なオールドファッションでしたが…。日本では考えられませんが、それこそまさに「アイコン」。変えないことに価値があるのですね。
自分のアルバム、ほかの写真を見ると高校生の私がいます。今見るとやっぱり子供ですね。基本は一緒でも、21年を経てまるっきり変わってしまいました。ケーブルカーとは大違い…。
なぜ、電車内の放送は鼻にかかった独特の声に聞こえるのでしょう。「ぇ次はぁ、新橋、しんばしぃ」のようなちょっとした節回しも他では聞かれません。最近はごくふつうの話し方でのアナウンスも増えつつある、気がしますが。お笑いトリオの「ななめ45°」の岡安さんがよくまねする車掌の口調というのは、まさに私の耳にしみついている、「独特の車掌口調」そのものであります。
で、私もやってみました。場所は東京・千駄木にある「せとうち」。その存在はJR東海の広報の方から教えてはもらっていたのですが、訪ねたのは初めて。中に入って、というより店の前まで来てびっくり。ひゃぁ。ところ狭しとさまざまな鉄道グッズで埋め尽くされています。何せシートは新幹線などの廃品。ランチョンマットには旧い鉄道地図がプリントされ、BGMは列車の走行音…。とまぁ、鉄道ファンは食べたり飲んだりするほかに、チェックすることがたくさんあるのです。(忘れる前に書きますが、料理は美味でした。とても上質な家庭料理、という感じ)
この日はわれわれのほかにお客さんのいない日でありまして。促されるままに車内放送の機器を使って私も例の声色と口調で「にわか車掌」に。…「ぇ本日もぉ、JR東海をご利用いただきまして、まことにありがとうございます。この列車はぁ…(けっこう続く)」。衝立の奥、みんなの見えないところから私の声がスピーカーに乗って響きます。「いよおッツ!名調子!」と盛り上がる「乗客」の声…。元車掌さんも居るというのに、ホント失礼いたしました。満足いたしました。