2008年2月アーカイブ

#139「ローカル?」

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 東京都心からわずかの距離のところに、その駅はあります。荒涼たる埋め立て地の向こうに見える「ゆりかもめ」の高架線。ぴゅーぴゅー吹く風は、冬はかなり冷たく感じます。何しろ周囲には人家無し。1月26日付の「東京新聞」によると、1日の平均乗降客は77人に満たない(07年12月)そうですよ。

 この「市場前」駅。ご存知の通り築地市場の移転予定先に作られた駅です。 市場前駅当然、移転のあかつきには賑わいを見せるのでしょうが、今はローカル風情抜群です。記事に触発されて見に行った私は、その寂しさを実感しました。確かに、これもまたひとつの「」です。

 ちなみに。「ゆりかもめ」の車内から、一枚目の写真を撮った場所のあたりを見ると、こんな感じです。前方には晴海の「トリトンスクエア」が屹立。やっぱり都会ですねえ。何かと便利な地域のようで、昨今はマンション建設ラッシュ。橋を隔てたこのあたりの「疑似ローカル」な空気は、いずれ跡形もなくなるのでしょうね。 市場前駅付近


#138「ベロ」

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 東京マラソン、盛り上がりましたねえ。お陰様で日本テレビがお送りした生放送も多くの皆さんにご覧頂き、ランナー以外の大勢の皆さまにもお楽しみ頂いたようです。 

  その生放送。ゴール付近の「中継車」がベロタクシーをベースにしていたこと、ご存知でしょうか。番組の中でもその姿が映ったシーンがありましたから、お気づきの方もいるかも知れません。マラソン本番の2日前、ビッグサイトに行くと近くでベロタクシーをトラックから降ろすところに遭遇しました。傍らのドライバーさんも準備万端という意気込みに溢れています。

ベロタクシー 近づいてみると、すでに小さなモニターや送信機などが取り付けられています。ゴール周辺では、排ガスを出す乗り物を使えないのでベロタクシーに白羽の矢が立ったそうです。著名人のランナーや日テレ・アナウンサーのゴール時の速度は、かなり落ちてしまっていますから、ベロタクシーの性能は打ってつけだったのでしょう。客席にカメラマンが乗り込むこの秘密兵器を使って、揺れの少ない鮮明な映像が送り出されました。

 ちなみに、今回話を伺ったドライバーさんは、普段は東京・丸の内付近にて営業をされているそうです。

ベロタクシー

#137 「ドリー」

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 ある日のスタジオにて撮った1枚です。移動しながら被写体をとらえるためにカメラを載せる台車ですね。この台車のことを「ドリー」と言います。英語のつづりは「dolly」です。 今あらためてこのつづりを見ると、「Hello,Dolly!」というルイ・


ドリー

アームストロングの名曲を思い出しますね(私はこの曲、フランク・シナトラのアルバム「IT MIGHT AS WELL BE SWING」に収録された、ノリノリのバージョンが好きですが)。

 この台車も、写真のように下にレールを敷くと断然、乗りもの好きの心に火を付けますね。保線工事を行うトロッコみたいな風情がぐんと増します。撮影用のドリーの動力は、もちろん人力です。急に動き出したり、急に停めると映像も「カックン」となります。そして秒単位、それ以上の細かな被写体の動きともシンクロさせなければなりません。いかにキレイにスムースにドリーを押すかは、アシスタントの腕の見せ所。「Hello,Dolly!」のリズムに合わせると、たぶんNGです。


でもやっぱり、私は押すより乗りたい…。


#136 「吸い寄せ」

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 漁船です。福井のとある港にて。いいですね。冬の日本海。今頃はカニですよ。カニ。ああ食べたい。それとイカ。あ、寒ブリもいいなあ…(妄想)。

 ところがこの漁船がいったい何を捕る船なのか、私にはわかりません。大きな電球が多数ぶら下がっているところを見ると、イカ釣り漁船ですかねえ(推測)。もしイカ釣り漁船なら、この時期はヤリイカが旬なんですよね…(推測)。

福井の漁港 ご案内のようにこの大きなランプ。「集魚灯」に吸い寄せられるように、魚たちは集まってきます。そのとき、魚やイカはどういう気持ちで灯りに近づくのでしょうね。「あ!明るい。あっちへ行こう」という思考のもとに、なのか。それとも、なんにも考えずにふらふらと吸い寄せられるのか。…後者は何かに似ていますね。はい。乗りものを見つけたときの私です。で、あちこちでとりあえず写真を撮ってしまうんですね。


#135 「成就」

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 その箱は、目の前、一番手前にありました。住宅街にある、小さな個人営業のおもちゃ屋さんでのことです。

 「乗りもノート #111」で書いた通り、造形・色彩ともに非常に出来の良い「日本テレビ中継車のミニカー」を入手したいと願っていた私。先日、おもちゃ屋さんに立ち寄ると、ミニカー売り場に向かいました。そこには、例の「中継車シリーズ」のミニカーの箱がずらりと鎮座していたのです。前述の通り、これらのシリーズは「安くて出来がいい」。けれども「箱の中身はあけるまで分からない」という欠点があります。運が悪いといつまでも目当ての品は入手出来ず、永遠に買い続ける恐れがあるのです。昨秋私は「テレビ朝日の中継車」を引き当ててしまいました。

 この日。一度は奥のほうの箱に手を伸ばした私でした。しかし、その刹那。何かに導かれるように、普段は絶対手にしないであろう、一番手前の箱をレジに持っていったのです。その「何か」が何なのか、未だにわかりません。桑田真澄投手を真似て言うなら、「乗りものの神様」でしょうか。

 

その結果が今回の写真、であります。ううーん。やったっ。

日テレ中継車ミニカー

 これにて「乗りもノート #120」で紹介した「トミカ」と合わせて、2台の日テレ中継車が私の棚の中に。念願成就、であります。ご声援ありがとうございました。


#134 「消防 その2」

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 日テレ報道局社会部が誇る、消防情報の大家(おおや、じゃありません。たいか、です)。彼の目にかかれば、私のような一般的な知識しか持ち合わせない者が一見したところ「消防車両」としか言いようのないミニカーも、きわめて精緻に分析されてしまうのです。

  まずはこの「指揮支援車」。いわゆる四輪駆動車をベースにした小ぶりの車両です。彼による解説はこうです。

指揮支援車  …指揮支援車は、東京消防庁ではなく。国の機関である、総務省消防庁の車両。これは全国に1台しかないので、非常にわかりやすいです。見分けるポイント「車種」「総務省消防庁の文字」

  …なるほど。確かに「総務庁消防庁」と書いてあります。ま、全国で1台しかない、ということは、その道の趣味の皆さまには有名な車両なのでしょうか。ちなみに。いま、彼からのメールに添付されていた写真を見ると実車のナンバーは「・119」のようです。さすが消防。

 

そしてもう1台。「特殊災害対策車」という車両です。

特殊災害対策車

   …この特殊災害対策車は、平成16年度納入型と分かります。見分けるポイントは「車体の形状」「回転灯の形」。直線的なフォルムが特徴のこの車両は、東京に数台ありますが、屋根上の回転灯がV型(ブーメラン型)をしているのは、平成16年度納入型のみ。この年には2台が納入されていますので、千住消防署旭町出張所か、三鷹消防署のどちらかです。

 …と、モデルとなった実車を2台にまで特定しちゃう。納入年度による微少な違いを知っているのがスゴイですが、そもそもなんで何年度にはどの車両が何台納入されたか、知っているのでありましょうか!畏るべし。マニア道。

 しかし冗談抜きで、この知識、役に立つんですよ。例えば現場をヘリコプターで上空から映した映像を見て、「△◎車が現場にいると言うことは、◆◎な状況が考えられる」みたいな推察が出来るのです。これは報道の取材・放送にはたいへんなアドバンテージ。趣味が仕事に生きる実例と言えましょう。


#133 「消防」

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 森羅万象、どのジャンルにも詳しい人はいるものです。今回は「消防」です。日本テレビ社会部には絶句するほど消防に詳しい記者がいるのです。事件事故とは切っても切れない乗りものですから、これは得難い知識といえましょう。

  先日まで、あるコンビニチェーンが、缶入り飲料に消防車のミニカーを付けるキャンペーンをおこなっていました。そのラインナップがこちら。

kon_080209_01.jpg 「救急車」「はしご車」「ポンプ車」ぐらいは、私もざっくり分かるのですが、それ以上に詳しい情報がこれらのミニカーから分かっちゃうのが前述の社会部記者なのです。

   例えばこのはしご車。

kon_080209_02.jpg

 「はしご車は、はしご車。以上」という情報しか持ち合わせない私ですが、彼がこのミニカーを見ると、こういう解説が付きます↓。

 

  …これは中央区にある「京橋消防署」のはしご車。通称「京橋はしご」です。見分けるポイント「車種」「タイヤの数」「はしごの形状」。直線的なフォルムが特徴のはしご車ですが、このシャーシはモリタ社と日野自動車が共同開発した、はしご車専用シャーシで、通称「MHシャーシ」と呼ばれます。MとHはそれぞれモリタと日野の頭文字。このシャーシ自体は、全国的にもポピュラーなもので、東京にも数十台が納入されています。

  ではなぜ1台に特定できるのか?それは、このはしご車が3軸であるということ。東京消防庁において、このシャーシで3軸10輪の通常型はしご車は、京橋署のただ1台のみなのです。(通常型では無い、3軸10輪ならば、品川や板橋など、ほかに数台あります)。

 

  …どうでしょうこの饒舌さ。一片の迷いもブレも無い滑らかかつ論理的な記述。一般人が知らない奥深い消防車の世界。このシリーズ、次回も続けますので乞うご期待!どうぞついてきてください。


#132「水上」

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 雪や氷の上を走れる「2WD自転車」を紹介したら、東京は2年ぶりの積雪。きのう月曜の朝は冷え込みましたから、路上は凍結で「氷上」と化しました。ここぞとばかり2WDの自転車で繰り出した方もいるのでしょうか。どうぞ事故にはお気を付け下さい。

 さて。「氷上」から思い出したひとつの地名。「水上」です。この二文字を見ると、真っ先に思いつく読みは「みなかみ」。群馬県民と一部の新潟県民にはお馴染みの地名です。JR上越線の駅があります。かつては私の地元新潟発、水上行きなんていう各駅停車が一日に何本かありました(新潟発高崎行きも記憶しています)。特急も多数行き交う重要な幹線だった上越線は、いまや時刻表を見るとローカル線の風情です。新潟から各駅停車で上越国境を越えようとすると、長岡、越後湯沢、あるいは水上での乗り換えを強いられます。長距離列車は風前の灯です。

 前置きが長くなりました。今回は「みなかみ」ではなく「すいじょう」です。この乗り物。隅田川をゆく水上バスのひとつ。「ヒミコ」です。名前も形も、インパクト大。ただの水上バスとは明らかに違います。デザインは松本零士さんによります。寒いけど、隅田川に行ったらちょっと気長に待ってみてください。おおおっ!と目を奪われますから。

水上バス


#131 「2WD」

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           またも日テレ資料室にあった1冊から。

kon_080201.jpg 『へんな乗り物』という、まさに私のための本であります。ちなみにこの写真を撮った場所が、まさに資料室。いい感じでしょう?

 さて本題。「4WD」という言葉はすっかり市民権を得られたと思います。自動車の世界で「四輪駆動」という意味ですね。通常は前2輪、または後2輪にエンジン動力を伝え、回転させて走る自動車。その4輪すべてに動力を伝えれば、より条件の悪い道でも地面をしっかりとつかんで走るコトが出来る…。という考え方です。Four Wheel Drive の略で4WD。欧米ではFour ではなくAllという語を使い、略称も「AWD」とよぶのが一般的です。

 ならば。この『へんな乗り物』という本に載っている自転車は「2WD」。前のタイヤにも足でこぐ力が伝達されるのです。その走行感覚は普通の自転車とはまったく違うみたい。坂道や泥道など、ちょっとワイルドに進むのか…ぐらいに思っていたのですが、メーカーのサイトを見てびっくり。氷の上や雪の上をすいすい走る動画も掲載されていました。おもしろそう…。「2WD」「自転車」で検索すると探せると思います。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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