2007年7月アーカイブ

#078 「原風景・海」

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 リアルタイムのスタッフがプロデューサーをつとめた特別番組が先日放送されました。スタジオジブリの背景画職人、男鹿和雄さんと彼の絵の世界を丹念に描いた、素晴らしい番組でした。

 男鹿さんの描く背景画のモデルとなった風景は、実はみちのくにいくつも存在する!ということで、この上なく美しい、日本の原風景を訪ねに行くのです。男鹿さんの絵も、そのもとになった風景の実写映像も、本当に美しい。大きな液晶テレビを買って良かった!と思う番組でありました。

 で、スタッフは真剣な鉄道好きではありませんが、取材で訪れたかの地で、たくさんの写真を撮ってくれましたよ。

海岸の風景は、JR五能線
東日本屈指の「乗ってみたいローカル線」です。
観光用の列車も走っているのですが、取材はふつうのディーゼルカーで。乗り換え待ち時間の長さも、また風情のひとつのようで。

 日本らしい海の原風景、でしょう?次回は「山」です。


#077 「無力」

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 飛行機は、重すぎると飛べません。ジャンボ機ボーイング747-400D)の場合、機体、乗客と荷物、燃料などトータルで269.9トンまでなら離陸が出来ます。それ以上になると重力には逆らえないと。どんなにフルスロットルでエンジンを回して加速しても、揚力は生まれません。無力です。

 まあそれにしても250トンもの重さが空に浮かぶのですから、その物理的な力は想像を超えるものです。そんな飛行機なのに、どうにも地上では無力な局面も。「バックすること」がそれです。


写真に写っている飛行機、これから離陸するため滑走路へ向け自走します。しかし、今この場所に至るまでは、小さい車に押されて写真の左側から90度ターンしながらバックしてきました。飛行機としてはまったくの無力です。

 しかしその押してくる作業を見ていると、とにかく上手いんです。一度も切り返すことなくきれいに90度のターンをし、飛行機の前輪を決められた□(四角い枠です)の中にぴたっとおさめます。そのとき、機体の向きは地面にペイントされた線とぴったり一致。見事に真っ直ぐ。機体の長さは70メートル。押す側の車の運転手の視点からは、どんな風にみえるのでしょう。はぁーっとタメ息がでるほど。そのプロセスを見ている私自身は、完全に「脱力」でありました。


#076 「札幌の地下鉄」

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 札幌の地下鉄にはなぜ網棚がないのか。私の疑問に皆さまから情報提供のメールを頂戴しました。皆さまあれこれと調べて頂いて恐縮の限り、ありがとうございます。いちばん多かったその理由は「忘れ物を防止するため」というものでした。まあ確かに乗車時間が比較的短いですし、網棚に載せてしまうと忘れがち、ではあります。私も春先の暖かい日に、脱いだコートを忘れたことがありますし。

 つぎの理由としては「雑誌やゴミなどの放置防止」。これも「確かに」ですね。ゴミはそうそう目にしませんが、雑誌はよく見かけますから。となると、札幌では東京でよく目にする「古雑誌回収→路上で販売」という業は成り立ちにくい、のでしょうか。

 ほお…、という理由もちらほら。まずは「車両製造費の削減」。ものすごく現実的ですが、軽視出来ない理由です。そして「車内広告が見やすい」という理由も寄せて頂きました。これもふむふむと思えますね。
 

もっとも札幌らしい理由といえるのはこれ。「冬季に外で付着した雪や氷が車内で解ける→下に座っている乗客が濡れる」というもの。これは一理ありますよね。

首筋にポトッと解けたての冷水が…心臓の弱い人だったら…そうじゃなくてもヒヤッとしますね。

写真のようにブレてしまうほど、座席から飛び上がっちゃいそうです。


#075 「足元で」

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 行ってきました。リアル特集お馴染みのコーナー、秘密の地下世界のロケに。第2弾では虎ノ門、霞ヶ関、日比谷付近の巨大地下共同溝へ潜入です。簡単に言えば、ライフラインをおさめたトンネルを大きく一本化したもの。工事のたびに掘り返すことも無くなり、大震災にも強くなるというのが主なメリット。

 文部科学省の庁舎前、虎ノ門の交差点からぐんぐん降りていくと、巨大な空間が広がっていました。そこから桜田門、日比谷方向へ移動しながら見学したのですが、そのルートにはレールが敷かれています。工事用のトロッコが行ったり来たりする鉄路です

      ものすごく似合わないヘルメットをかぶった私
その横にあるのが、トロッコを引っ張る機関車。小ぶりですが頼もしい地下運搬の主役、でしょう。残念ながら動くトロッコに乗車は出来ませんでしたが。

 線路に沿って歩くと面白いことに気付きます。このトロッコにも一応、停車場というのが決まっていて、それぞれに名前が付いています。その付近の地上にある施設に対応しているので、「外務省前」なんていうんです。もちろん地上の外務省前には、線路も停車場もありません。足元深くの見えないところで、乗りもの好きの心をくすぐる列車が走っていました。もしやあなたの街でも…?


#074 「旅の友」

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 出張で。私たちテレビのクルーは、撮影機材を運びますのでどうしても身体一つ、というわけにはいきません。大きく重いジュラルミンのケースに、バッテリーや予備テープや、レンズ、フィルターなどを詰め込んで出かけます。ほかにも三脚やら照明を入れたケースなど。



 その機材たちを預けると、
 こんな感じに
 コンテナに収められる
 わけですね。
 


 いずれ自分たちのいる客室の床下に、このコンテナが入ります。出張や旅行に欠かせない、旅の友であります。ところでこのコンテナを引っ張る小さな車。じつに魅力的です。広い空港をキビキビと走り回る。しかも何台もつなげて走るので、カーブを曲がる際の弧の描き方が独特。いかにも働く車、という感じです。


 大きな飛行機をきわめて間近に、低いアングルから見上げることもできるわけで。つい決められた距離以上に近づきたくなりそう。こりゃ飛行機好きにはたまらないかもしれません。まあ実際に運転している人はそんな剣呑なことは考えてもいないでしょうが。旅の友、きょうも滑走路で活躍していることでしょう


#073 「ターミナル」

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      阪急梅田駅です。



  壮観ですね。ずらーっと。9つの線路、10のホームが並ぶターミナルです。ラッシュ時にはすべてのホームに列車が入線するタイミングがあるのでしょうか。 東京もこうした線路が「突き当たる」構造の駅は幾つか有ります。でもここまでホームが多いのは見あたりませんよね。JR上野駅はどうだったか…。

 ヨーロッパの都市にありそうな、ターミナルという名に相応しい素晴らしい造りです。鉄道を中心に豊かな沿線文化を築こうという、創業者・小林一三の理念が色濃く感じられます。賑やかな中にも、洗練とでも言うべき雰囲気が横溢。関西とは今のところ無縁の私でも、この駅に立つたび、独特の空気を十二分に感じることができます。

 東京では、地下鉄との相互乗り入れが進むにつれ、ターミナルらしい景観は縮小しつつあります。東急東横線の渋谷駅も、いずれ地下鉄と合体して地下駅になってしまうとか。阪急梅田のような趣のある駅ですと、映画になりそうな出会いとか、待ち合わせとか、イメージしやすいですよね。地下のホームではどうかなあ…。 


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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