#077 「無力」
飛行機は、重すぎると飛べません。ジャンボ機(ボーイング747-400D)の場合、機体、乗客と荷物、燃料などトータルで269.9トンまでなら離陸が出来ます。それ以上になると重力には逆らえないと。どんなにフルスロットルでエンジンを回して加速しても、揚力は生まれません。無力です。
まあそれにしても250トンもの重さが空に浮かぶのですから、その物理的な力は想像を超えるものです。そんな飛行機なのに、どうにも地上では無力な局面も。「バックすること」がそれです。
写真に写っている飛行機、これから離陸するため滑走路へ向け自走します。しかし、今この場所に至るまでは、小さい車に押されて写真の左側から90度ターンしながらバックしてきました。飛行機としてはまったくの無力です。
しかしその押してくる作業を見ていると、とにかく上手いんです。一度も切り返すことなくきれいに90度のターンをし、飛行機の前輪を決められた□(四角い枠です)の中にぴたっとおさめます。そのとき、機体の向きは地面にペイントされた線とぴったり一致。見事に真っ直ぐ。機体の長さは70メートル。押す側の車の運転手の視点からは、どんな風にみえるのでしょう。はぁーっとタメ息がでるほど。そのプロセスを見ている私自身は、完全に「脱力」でありました。