#077 「無力」

|

 飛行機は、重すぎると飛べません。ジャンボ機ボーイング747-400D)の場合、機体、乗客と荷物、燃料などトータルで269.9トンまでなら離陸が出来ます。それ以上になると重力には逆らえないと。どんなにフルスロットルでエンジンを回して加速しても、揚力は生まれません。無力です。

 まあそれにしても250トンもの重さが空に浮かぶのですから、その物理的な力は想像を超えるものです。そんな飛行機なのに、どうにも地上では無力な局面も。「バックすること」がそれです。


写真に写っている飛行機、これから離陸するため滑走路へ向け自走します。しかし、今この場所に至るまでは、小さい車に押されて写真の左側から90度ターンしながらバックしてきました。飛行機としてはまったくの無力です。

 しかしその押してくる作業を見ていると、とにかく上手いんです。一度も切り返すことなくきれいに90度のターンをし、飛行機の前輪を決められた□(四角い枠です)の中にぴたっとおさめます。そのとき、機体の向きは地面にペイントされた線とぴったり一致。見事に真っ直ぐ。機体の長さは70メートル。押す側の車の運転手の視点からは、どんな風にみえるのでしょう。はぁーっとタメ息がでるほど。そのプロセスを見ている私自身は、完全に「脱力」でありました。


2016年8月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

プロフィール

近野さんポートレート
近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

more

このブログ記事について

このページは、近野 宏明(こんの ひろあき)が2007年7月17日 00:00に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「#076 「札幌の地下鉄」 」です。

次のブログ記事は「#078 「原風景・海」 」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。