2015年6月アーカイブ

#461「意匠」

|
 一世紀以上におよぶ自動車の歴史のなかで、世界的なアイコンとして通用する車はそう多くはありません。先頃、トヨタ・カローラの国内累計販売台数が1000万台を超えた(商用型を除く)というニュースがありましたが、現在のカローラは「11代目」とのこと。それだけの数を販売していながら、アイコンとしてデザイン化できるほどの強い印象を持つモデルが無いのは、数年ごとにガラッと変わるフルモデルチェンジを繰り返しているからでしょう。それだけに、私のような乗りもの好きには「何代目が好み」みたいな話題のタネになって実によいのですが。

フォルクスワーゲン

 きょうの写真はフォルクスワーゲンのバンです。ショッピングモールのちょっとした広場にあったクレーンゲーム機ですが、なぜかそのベースになっています。これが古い車体を改造した「余生」なのか、あるいは車としてはまったく機能しない、形だけ拝借した「ダミー」なのか判然としません。ただどちらにしても、この車の愛らしい顔立ちと高い認知度が、ゲーム機のデザインに「採用」される理由でしょう。長年モデルチェンジしなかったことがここでは奏功しています。思えばフォルクスワーゲンというメーカーは、モデルチェンジしてもその意匠がおおきく変わらないことがひとつの特徴です。歴代のモデルを見ても、少しずつ変わっているものの、デザインコンセプトは一貫しています。  意匠に対する考え方というのはなかなか興味深いものです。

#460「不満」

|
 自動車大国アメリカの多くの国民にとっては、「鉄道での移動」といえば大都市圏の地下鉄や路面電車による通勤か、大陸をゆったり横断する観光目的の列車、といったものしか思い浮かばないそうです。 つまり、数キロ~十数キロの事務的移動か、3000キロ離れたところへのゆったり移動か、そのどちらか。数百キロの距離を飛行機に伍して短時間で移動出来る高速鉄道(つまり日本の新幹線のような)は、一部の地域を除いてそのイメージすら沸かないようだといわれます。

 その「一部の地域」が「北東回廊」とよばれるボストン-ニューヨーク-ワシントンを結ぶ地域です。ここを貫く在来線を活用してアムトラックが多少高速の特急を走らせていて、全米屈指の利用客を誇る路線となっています。飛行機での移動は短時間ではありますが、まず空港まで行き、セキュリティチェックや搭乗手続きに時間を要し、到着地でまた都心まで出る、という合計時間を考えると列車にも充分な競争力があるのです。げんに、私はニューヨーク行きで飛行機を使ったことはありません。

ニューヨーク、ペンステーションの出発時刻表示
 しかし、先般の脱線事故でも明らかなように、この区間の鉄道の安全対策は必ずしも充分ではありません。途中の鉄橋などのインフラも老朽化しているのに抜本的な更新は手つかず。貨物列車やローカル列車も走る在来線に高速の電車を走らせることで、ダイヤは常時乱れ気味。事故後はなお運行に慎重を期しているのか、先日ニューヨーク出張の際に利用した際も、往路で30分遅れ、帰路は1時間10分遅れでした。せめて定時性が確保できるといいのですが、こう遅れが常態化すると、乗客は飛行機に流れていきそうです。となると旅客収入が減って安全策に回す予算が...。悪循環が容易に想像されます。この問題、どうしたものでしょうか。

#459「同乗」

|
 4月の中旬から目まぐるしく忙しい日々が続き、まる2か月も更新を滞らせてしまいました。「最近記事を更新していませんねえ」というご指摘を励ましと受け取り、久々に書いております。

2015061666666.jpg  更新をお休みしているあいだ、あちこちに出張したのですが、その道中での1枚です。空港でチェックインすると、窓口の係員に「ご搭乗の便には犬たちも乗りますことをご承知おきください(...的な英語)」と言われました。文字通りの意味は通じるので「ふーん」と思うのですが、その意味するところが本当に理解できたのかというと、ちょっとよくわかりません。「貨物室でたくさんの犬を運ぶのか?」などと推測しつつ、保安検査場を抜け、搭乗便のゲートに着いて、その意味するところがわかりました。

 とても賢そうな大型犬が何匹もいたのです。聞いてみると、「サービスドッグ」だといいます。ひとくちにサービスと言われても様々な種類の仕事があるとは思いますが、ここにいた犬たちは、災害のあった地域で傷ついた人々のこころを癒やす、といった役割を果たすようでした。この時点ではまだトレーナーとの移動中。優しく厳しい(と思われる)トレーナーの足に首や腹をこすりつけて甘えるその姿は何とも愛らしい。見ているだけで癒やしを施され、私も彼らに続いて搭乗いたしました。

2015年6月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

プロフィール

近野さんポートレート
近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

more

このアーカイブについて

このページには、2015年6月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2015年4月です。

次のアーカイブは2015年7月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。