#460「不満」

|
 自動車大国アメリカの多くの国民にとっては、「鉄道での移動」といえば大都市圏の地下鉄や路面電車による通勤か、大陸をゆったり横断する観光目的の列車、といったものしか思い浮かばないそうです。 つまり、数キロ~十数キロの事務的移動か、3000キロ離れたところへのゆったり移動か、そのどちらか。数百キロの距離を飛行機に伍して短時間で移動出来る高速鉄道(つまり日本の新幹線のような)は、一部の地域を除いてそのイメージすら沸かないようだといわれます。

 その「一部の地域」が「北東回廊」とよばれるボストン-ニューヨーク-ワシントンを結ぶ地域です。ここを貫く在来線を活用してアムトラックが多少高速の特急を走らせていて、全米屈指の利用客を誇る路線となっています。飛行機での移動は短時間ではありますが、まず空港まで行き、セキュリティチェックや搭乗手続きに時間を要し、到着地でまた都心まで出る、という合計時間を考えると列車にも充分な競争力があるのです。げんに、私はニューヨーク行きで飛行機を使ったことはありません。

ニューヨーク、ペンステーションの出発時刻表示
 しかし、先般の脱線事故でも明らかなように、この区間の鉄道の安全対策は必ずしも充分ではありません。途中の鉄橋などのインフラも老朽化しているのに抜本的な更新は手つかず。貨物列車やローカル列車も走る在来線に高速の電車を走らせることで、ダイヤは常時乱れ気味。事故後はなお運行に慎重を期しているのか、先日ニューヨーク出張の際に利用した際も、往路で30分遅れ、帰路は1時間10分遅れでした。せめて定時性が確保できるといいのですが、こう遅れが常態化すると、乗客は飛行機に流れていきそうです。となると旅客収入が減って安全策に回す予算が...。悪循環が容易に想像されます。この問題、どうしたものでしょうか。

2016年8月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

プロフィール

近野さんポートレート
近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

more

このブログ記事について

このページは、近野 宏明(こんの ひろあき)が2015年6月23日 13:27に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「#459「同乗」」です。

次のブログ記事は「#461「意匠」」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。