2013年12月アーカイブ

#397 「暮色」

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 2013年も残りわずか。皆さん今頃は大掃除を終えておせちの用意や正月飾りを取り付けたりしているころでしょうか。あるいはすっかり準備万端、夜の「笑ってはいけない...」に備えてテレビ前の環境を整えたとか。

 私にとってはあっという間に暮れた2013年。生活の場ががらっと変わりました。仕事もプライベートも大転換。気づけば大晦日。このペースで時間が流れるとすれば、あっという間に「このたび日本に帰任することに...」となりそうでコワイです。「時の流れが速まるのは加齢のせい」という説がありますが。そこは聞かなかったことに...。

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 ということでことし最後に掲載するのは、ワシントン市内を走るタクシーの後席から見た「暮れの」空です。撮影からちょっと時間が経っていますが、晩秋のうろこ雲。ホワイトハウス南側のConstitution Avenue を移動していると、なんだか後ろからオレンジ色の光が差し込んできたのを感じて、振り向くとこのグラデーション。真正面の突き当たりに沈む夕日、左右の街路樹の黒。携帯電話のカメラで撮ったわりには、いい感じの1枚ではないでしょうか。まさに「自画自賛」。まぁこの暮色を生み出したのは私じゃないんですけど。ともあれ、車の運転が好きな私ですが、このときばかりは「後席の人」でよかった!と感じました。結局どの席に居ても楽しいんじゃないか?あ、はい、そうです。認めます。

 乗りもの好きの皆さま、ことしもご愛読ありがとうございました。来年がよい1年でありますようお祈り申し上げます。

#396 「両立」

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 クリスマスにお正月。日本の子どもたちにとって楽しみな時期がやって参りました。あれも欲しいしこれも捨てがたい、と悩みを抱えた子どもたちがきっとたくさんいることでしょう。クリスマスではこっちをリクエストして、お年玉でこれを買おう、と計画している子もいるかもしれません。

 かく言う私もその1人でした。「車のおもちゃも欲しいし、飛行機のおもちゃも欲しい。むむむ...」と困っていた幼少のみぎりが、ついきのうのようです。実際にはもう30年以上経っているんですけど。そんな願いを一発で叶えるおもちゃではなく、「ホンモノ」があることを、アメリカに来て知りました。

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 こちらがその「ホンモノ」。何とも可愛らしい軽飛行機ですが、よく見るととんでもない機能を備えています。コックピット部分が翼と機体から離れて、そのまま自動車として走っていくというしくみ。飛行機も車も欲しいという願いを見事に両立しています。

 かなり古い機体ですが、飛行機の歴史、自動車の歴史をみると、他にも同様の「着陸したら車に変わる」というコンセプトの飛行機はいろいろあったようです。どっちが主体かは議論の分かれるところですが。

 問題は「翼」と「機体」をどう片付けるかということですが、折りたたんで(それでもけっこうデカい)車が運んでいく形式のほか、この写真のように「置いて行く」形式も。どちらも一長一短ですね。どんな形式にしろ、結局この種の両立機が定着しなかったところをみると、やはり両立という発想自体に無理があったんですかね。

 ということでよい子の皆さん、二兎を追う者は一兎をも得ずといいます。狙いはひとつに絞って堅実にいくのが間違いなさそうです。


#395 「結線」

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 バスの到着というのは、21世紀に残る数少ない「あてのない待ち時間」ではないでしょうか。もちろん最近はスマートフォンのアプリなどで「次に来るバスの運行情報」みたいなのが見られたりしますが。私の場合はそこまでしません。ゆえに、由緒正しい「昭和の待ち人」的な佇まいで、バスがやってくるはずの方向を何度も見やったりするわけです。

 と、そこに給油口にチューブを結線したままのフォード・フュージョンが居てびっくり。

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 なにゆえ路上で給油しているのか。そしてもし給油なら横に立っているべきドライバーはどこに行ったのか。ていうかガソリンスタンドはどこ?と、さまざまな疑問がわいてくる、わいてくる。しかもバスが来そうにないので、様子を見に近づいてみますと、これが電気の補給をしていると判明。

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 この車はいわゆる「プラグイン・ハイブリッド」なんですね。電気モーターとガソリンエンジンを併用しつつ、その大容量バッテリーに直接充電できちゃうというもの。このチューブの中、ガソリンが流れているのではなく電線が入っていますから、文字通り車と「結線」していると。

 アメリカ車も昔のイメージとは異なりエコ性能を上げているとはいえ、街中で見かけるとまだびっくりしますね。こうした光景を見慣れる日は意外と早く訪れるのでしょうか。などと考えていると、お目当てのバスが到着。「あてのない待ち時間」は回避されました。


#394 「終焉」

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 アメリカと聞いてイメージされる乗りものの一つが、フォルクスワーゲンのバンでしょう。「ドイツ車じゃないか」とのご意見もあろうと思いますが。...前回と同じ書き出しですみません。

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 でもきょうご紹介するのは少々ひねりがありまして。「ビートル」と呼ばれたおなじみの「タイプ1」をベースに、上半身を四角いワンボックスに着替えた「タイプ2」であります。ちなみにこの白いモデルは私と同い年、1972年製だそうで、でもちゃんとブンブン走ります。きちんと整備すれば現代の交通にも対応できるんですね。

 その愛くるしい風貌で、自動車に興味のない方でも「あぁ」と思うこのモデル。厳密には生産時期によってだいぶ変化もしているのですが、この車をモチーフにしたバッジやマグネットなどはアメリカでよく見かけます。サーフボードや大きな旅行カバンを屋根に載せた(どちらかというとイイ感じにくたびれた)姿は、一時代のアメリカの象徴でした。

 で、最近とても驚いたのが、まだこの車の「新車」を作っていたということ。もちろん本国ドイツではなく、ブラジルで。はー。しかしその新車生産もいよいよ終焉を迎えるとか。来年から義務化される安全装備に対応するのが困難、というのが理由のようです。果たしてまだ間に合うのか。この車との生活はどんな感じか。終焉と聞くとついいろいろ考えてしまいます。


#393 「定番」

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 アメリカと聞いてイメージされる自動車の一つが、フォルクスワーゲン・ビートルでしょう。「ドイツ車じゃないか」という声がありそうですが。西海岸のサーフィン文化には欠かせない存在のこの車。サーフボードを載せた姿が定番であります。

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 今回の1枚はカリフォルニアで撮ったものです。ダムを見下ろすビジターセンターの駐車場ですから、おしるし程度に木が植えられています。でも背景を見るとおわかりのように、もともとは緑のない黄色く乾いた土地に、これまた乾いた青い空。カラッと熱い日射しのもと、屋根のペイントはあたかもたったいま剥げてしまったように見えます。...私の目には。いいくたびれ具合。このシチュエーション自体が、定番じゃないでしょうか?

 この車のナンバー、ちゃんと発給の場所はカリフォルニア州です。「VW」ってフォルクスワーゲンの頭文字をそのままナンバーとしているのも粋ですね。窓に貼られたステッカーも、実に「らしい」。見どころ満載の車です。

 でもよく見たら、ナンバープレートの枠に刻まれた大学名、これニューヨーク近郊のシラキュース大学ですね。車に歴史有り。どういう車歴が刻まれているのでしょうか。


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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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