2016年4月アーカイブ

#483「赤錆」

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 先日もピックアップトラックを考察しましたが、今回もまた。何しろアメリカらしい乗りもの、ってことなんですね。今回は趣味の現場ではなく、事業所で見かけたものです。ワシントン郊外の「蒸留所」=ウィスキーとかウォッカとか、蒸留酒を造る工場に行ったとき、隣の小屋から顔をのぞかせていたのがこちらの一台。

20160426用.JPG  錆びてます。赤錆だらけのトラックです。フロントグリルはすでに欠損してます。運転席に乗ろうとしてドアを開けたら、そのままガタンと落ちそうな予感がします。フロントタイヤにもご注目。すでに大地と一体化しつつありますね。現役を退いてどれぐらい経ったのでしょう。

 しかし荷台を見ると、これまた赤く錆びているけれど、樽がちゃんと載っかっています。老兵の意地を感じるところです。絵本の世界ですと、このトラックが奮い立って新車のトラックの窮地を救うというストーリーがあり得ます。私がもし絵本作家なら、そういう筋書きを選びますね。そんな風に擬人化したくなるのは、ヘッドライトが丸くて「人の目」に近いからでしょうか。このとぼけた味わいを持ったトラック、赤錆びもこのへんで止めないとほんとに朽ち果てそうですので、うまいこと大切にしていただきたいものです。


#482「ファンシー」

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 車のインテリアというものは、乗る人の趣味がわりとハッキリ出たりします。古くはステアリングホイールにカバーを付けた車がよくありました。マニュアルミッションのセレクターの握りが、水中花的な「例のあれ」に取り替えられている車も。リアウインドー越しに、たくさんのぬいぐるみが並んでいる車や、背もたれの上半分だけレースのカバーで覆われた車も最近見なくなりました。

20160419用1.JPG  古めの車を集めたイベントで見かけたこの赤いフォード。1950年代のものと思われます。そのエクステリアはまさしくその時代らしい丸みを帯びた可愛らしいフォルム。インテリアはどうかなあと思い、中を覗き込んで発見したのがこちら。

20160419用2.JPG  ピンク色のCDプレーヤーが前席の真ん中に鎮座していました。よく見ると、キティちゃんの絵柄がそこに。ケーブルがつながれていたので、おそらく車載のスピーカーから音も出るのでしょう。

 なぜキティちゃん?と思うのですが、確かにこの場所には真っ黒いクールなCDプレーヤーは似つかわしくないかもしれません。よくよくインテリアとの相性を考えた選択なのではないか、と思われます。オーナーに直接確認出来なかったのが残念です。

#481「老体」

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 ニューイングランド地方に出掛けたとき、給油しようとガソリンスタンドに入ったら、実にいい感じのピックアップトラックを見つけました。

note0412.jpg  アメリカでは、古いトラックを本当によく見かけます。特に日本ではほぼ絶滅しているといっていいボンネットのある小型トラックは、今もここでは幅をきかせています。この種のトラックは、事業所での用途もさることながら、個人所有のものもけっこうあるのがアメリカらしい。しかも「荷台に積んで走る」のではなく、何かを「引っ張って走る」姿もよく見かけます。

 例えば、趣味で乗馬をやるひとは馬を乗せるトレーラーを引っ張りますし、オフロード用のバイクを乗せたトレーラー、芝刈り機を乗せたトレーラー...。川や海辺までモーターボートを引っ張る姿もこれからの時期はとくに増えそう。余暇や趣味の世界と密接に関わっているんですね。その種の用途ですと、べつに最新型じゃなくても何ら問題ないわけで、「親の代から乗ってる?」と見受けられるような年代物もたくさん走って居ます。

 老体でありながら若者の趣味や余暇に活躍するトラックを見ると、野外活動の幅広さと歴史の深さを感じるばかり。「お爺ちゃんトラック」は趣味の現場の傍らで、孫世代の若者の活動に目を細めているようです。

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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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