#083 「さじ加減」
新しいスタイリッシュな
路線バス。
その屋根には薄っぺらい
箱が乗っています。
エアコンです。
私たちが子どもの頃、バスにクーラーなんぞ付いてはいませんでした。上と下、双方から開く窓を全開にして、スピードに任せて吹き抜ける風だけで涼を感じていたものです。
そしてドライバーはというと。右横の窓を開けるのはもちろんですが、ハンドルの付け根あたりに、バコッと外向きにひさしのように開く扉(教科書ぐらいのサイズでしたか)がありました。そこからまさにダイレクト。真っ正面からの風を足元に流し込んでいました。ハタから見ていると、靴を脱いで、あの扉のふちに足を載っけて走ったら、スースーして気持ちいいだろうなと、子どもながらに思ったものです。
ま、そういう旧景はめっきり見られなくなりましたね。この時期、東京のバスはばっちり冷房が効いています。お陰で、「遅刻寸前、駅まで走らなきゃ!」というとき折良くバスが来ると、乗った瞬間の涼しさにトクした気分が倍増です。あと贅沢を言うとすれば、「さじ加減」でしょうかね。私は不満を覚えたことはあまりありませんが、冷え性の方にとってバスの冷房は「部屋がひとつ」だけに逃げ場がありません。「弱冷房席」みたいな芸当は構造上、無理です。まだまだ暑さは続きそう。冷房が苦手な方には外でも中でも、辛抱の季節でもあるのですね。