#032 「耳福」
「福耳」ではありません。見る幸せ=「眼福」に対する、聞く幸せのこと。私の造語です。辞書には載っていませんよ。
私が飛行機に乗るとほぼ毎回やること。=機内放送の「落語」を聞くことです。着席し、機内誌をパラパラ…聴いたことのない演目だったり、寄席やテレビで聴いたことのない噺家さんだったり。
そうなると俄然期待は高まります。イヤホンをつけて、「いまどの辺かな?」と確認。お目当ての演目まで耳を傾けます。あとはひとりで
ニヤニヤ、クスクス。
…はい、不審者ここに現るの巻、でありんす。
江戸時代・あるいは明治期に生まれた古典落語は、演者の語り口の違いを楽しめます。しかし活躍中の噺家が練り込んだ新作落語に巡り会ったりすると、これは幸甚。いつぞや機内で聴いた、桂文珍師匠の「商社殺油地獄」は出色でした。あらすじはネットでご参照頂きたいのですが、産油国の王位継承に遭遇したニッポンの商社駐在員のとんでもない奮闘(?)ぶりがとにかくおかしくて。確か、このときの機内放送は海外のホール公開収録だったような記憶が。きっと現地の日本人駐在員は自分や家族になぞらえて、腹を抱えたことでしょう。これ、どこかでもう一度聴けないものかなあ…。
旅行や出張での「一期一会」には、こんな至芸もあるんです。
ただ眠っちゃ損ですよ。