#014 「試乗」
報道記者をやっていて、趣味と仕事が一致するのは幸運なことです。例えばずっと政治史を研究してきた人が政治記者として生の動きを取材するとか。あるいは強い関心を持った国に特派員として赴任するとか。社会部の場合、地震や災害に詳しい人が気象庁を担当するなど、ピッタリくる場合があります。その最たる例がかつての「運輸省」担当でしょう。現在は国土交通省となり、建設・国土分野も包含しています。しかし以前は純粋に運輸分野だけであったわけですから、乗り物好きにはたまらない役所です。
新規開業や新車両のデビューには、「試乗」が開催される場合があります。営業運転前の試乗なので、当然まっさらな設備や車両に乗せてもらえるわけです。記者としてフラットな心持ちで取材するのは当然のこと。しかし一通りの取材が済めば、やはり自分の視点であれこれと(放送には殆ど使えない)質問をするわけです。開業直前に新幹線・品川駅を取材したときもそうでした。交通機関の広報担当者はきわめて優秀な方が多いですが、必ずしも「マニア」ではありません。マニア的視点の質問は本質を突いているとは限りませんし、○×と比べて…とか、△□のときは…なんていきなり言われても、すべてに答えられるハズもないのは当然でしょう。困らせてすみません。
2年前にリニアモーターカーにも試乗しました。わずかな距離ですが、時速500キロの世界を実感して、技術的にはほぼ完成しているという説明に、なるほどなと首肯したものです。むしろ需要とコストとのバランスが最大の問題でしょう。きわめて政治的な話であります。写真を見ると楽しそうに見えますが、納税者として、利用者予備軍として、あれこれ考えることの多い、非常に意義ある試乗でした。…写真を見るとホント、単純に楽しんでいるように見えますけどね。