#008 「通勤電車の座りかた」
大都市の通勤電車は、たいがい1両のドアが4か所。ドアとドアの間の座席は、窓に背を向けて7人が並んで座るタイプです。この座席が全部空いていたら、あなたはどこを目指しますか。
恐らく大多数の人は一番端の席に陣取ることでしょう。下車のときもドアが近いですし。
始発駅などで見ていても、いきなりど真ん中に座る人はそういないものです。数少ないこのタイプは、心なしか確固たる自信を秘めたような人が多い。私は、ど真ん中を目指す人は会社でもリーダー的存在、と勝手に分析しています。常識的には、仮に7人掛けの座席に1から7の番号を振るとすれば、まず埋まるのが1番と7番。次が4番。ここまでは妥当です。
しかし。見ていると次の人はきちんと2番や3番に座るかというと、そんなことはない。だいたい2と3の境界線上に座るのです。で、5と6の境界線上も同様。斯くして、7人がけの座席に5人がゆったり座る、という図が描かれるのです。大柄な男性が2人もいれば、着席はこれにて打ち止めです。
遅れて来た乗客が勇気を示した場合はどうなるか。「すみません」などと口の中で遠慮がちにこぼしながら、詰めてもらう。これで6人。しかしそのときの詰め具合が肝心。ど真ん中4番の人まで気を利かせて体をズラすと、もはや正しい7人掛けへは修正不能になるのですから。1番と7番以外の4人が、全員小数点上に座ることになっちゃいます。野球と同様。「四番は不動」が「理想の7人掛けへの道」の定石なのです。