#007 「盲腸」
鉄道の世界には「盲腸線」ということばがあります。
あたかも盲腸のように、本線から
ちょっとはみ出した行き止まりの
路線のことです。
即物的な言い方ですが。東京の地下鉄にも何か所か、盲腸線と呼べる部分が存在します。先日乗車した千代田線の支線もそのひとつ。その路線は足立区の綾瀬駅から北綾瀬駅へのわずかに一駅分に過ぎません。
もともと駅を作る計画が先にあったのではなく、本線から少し離れたところに広大な車両基地(=綾瀬検車区)を作る際に周辺住民の要請で設けられた駅、だそうです。
人間の盲腸と違って、ここの盲腸は本当の行き止まり部分に運行上の重要な施設を抱えているのです。
「切除」するなんて滅相もありません。
とはいえ旅客用の設備は最小限。北綾瀬駅のホームは短く、車両はこの区間専用の3両編成のワンマン運転です。
私が初めて乗ったのは、盲腸の先から本線へ戻る電車。到着した列車の運転士は、すぐ反対側の運転席に移動。このわずか2.1㎞の路線を、彼は何回往復するのでしょう。この盲腸線だけ担当していたら、運転士としては物足りないかなあ。絶滅も近い5000系という古い車両がゴトゴト高架線を行きます。
朝夕は混雑するのでしょうが、昼下がりゆえ乗客は20人ほど。3両編成なのでガラガラの全体が見通せることもあり、東京メトロとは思えぬローカルな風情です。
これ、悪くありません。