鉄道アーティスト★小倉沙耶レポート★
みなでのらんけ!阿佐海岸鉄道
寒くて暗くて思わず身を縮めてしまう、冬の夜。
街路樹や家などを明るく照らし、私達の心を温めてくれる電飾に使用されているのが、LEDです。
このLED、徳島県が世界最大の生産量を誇ることを、皆さんはご存知でしょうか。
世界シェアの約25%を徳島県で生産しており、
中でも白色LEDはなんと世界シェアの約60%を占めています。
そんなLED王国・徳島の海部駅から、宍喰駅を経て高知県の甲浦駅までの3駅8.5kmを結ぶ、
第三セクター鉄道の阿佐海岸鉄道では、
2009年12月19日から2010年1月11日まで、
LED電飾を施した「イルミネーション列車」の運行を行いました。
イルミネーション列車に使用されているのは、九州の高千穂鉄道からはるばる海を越えて、
阿佐海岸鉄道へ迎えられた車両、ASA301です。
実は私、この車両が新門司港から徳島港までフェリー輸送された時に
「こんなチャンスは滅多にない!」
と、同じフェリーに乗り込んだという思い出があります。
新天地で元気に走る姿を見るのは、今回が初めて。
イルミネーション列車として走るのは夕方の運行ですが、
せっかくですから朝の列車から阿佐海岸鉄道を楽しんでみましょう!
阿佐海岸鉄道では利用客の利便を図るため、昨年12月1日から、
朝方の上下列車2便がJR牟岐線への直通運転を行っています。
普段は見られない、阿佐海岸鉄道・阿佐東線を
JRの特急用気動車キハ185が普通列車として走る姿や、
反対に阿佐海岸鉄道の気動車が牟岐線を快走する姿を見られるのは、
朝だけのお楽しみです。
とはいえ、今の季節は冬。
牟岐駅からキハ185に揺られてやってきた海部駅の到着時刻は6時29分。
空にはまだ、お月様が浮かんでいます。
そこに、ヘッドライトを光らせてやってきたのは、高千穂鉄道時代と変わらない塗装のASA-301!
「高千穂復刻列車」と銘打ち、高千穂鉄道時代の
車両番号であるTR-201という表記も残したまま運行されているんです。
早速乗ってみると、電気は消されていますが、車内全体にLEDのコードが張り巡らされていました。
タイフォンの軽やかな音が響き、牟岐行の列車が出発!
第三セクターの気動車に乗ってJRの路線を行くのは、とても新鮮な気分でした。
時間は変わり、今度は車窓を楽しむため、日中の列車に乗り込みます。
阿佐東線は殆どが高架を走り、車内からの眺めは抜群!
海も近く、水面の煌きに思わずため息が漏れます。
冬の陽の傾きは早く、頭上を闇が纏いました。
さあ、いよいよイルミネーション列車の運行です。
甲浦駅ホームで待っていると、ポッと柔らかい光が灯りました。
私はまるで子供のように「わぁっ!」と声を上げてしまいました。
ふんだんに使われたLEDは、車内で規則正しく灯り、
神戸ルミナリエのような光のアーチが続いています。
それが白い天井や壁に反射して、思っていたより ずっとずっと感動的な空間が広がっていました。
私の後ろでは、カメラを持った男の子とそのお母さんが、感嘆の声を上げていました。
「うちの子が、どうしてもイルミネーション列車を見たいって言うものだから」
「県外から観光でお越しになったんですか?」
「いえ、住まいは徳島市内です。ただほら、薬王寺に来たから足を伸ばしても良いかなって」
薬王寺は、徳島の初詣の定番スポット。
最寄駅はJR牟岐線の日和佐駅になります。
私たち3人は、発車まで席につかず、車内の端でイルミネーションに見惚れていました。
発車して座ると、今度は窓に青やピンクの光が映り、更にロマンチックに。
あっという間に終点の海部駅に到着したのでした。
海部駅で降りると、鉄道ファンの方々が
イルミネーション列車とJR牟岐線の列車の並びを撮影されていました。
「甲浦から車で追いかけてみたけど、列車がまるで宇宙船みたいだったよ」
阿佐東線に日中乗車されていたという鉄道ファンの方は、
イルミネーションの迫力にただただ驚くばかり。
幻想的な光は訪れた皆さんの印象に、強く残ったようでした。
阿佐海岸鉄道の各駅には
「みなでのらんけ 阿佐東線」というのぼりがたくさん取り付けられていました。
列車に取り付けられている、すだちくん・ぽんかんちゃんのヘッドマーク(写真はすだちくん)にも
「みなでのらんけ 阿佐東線」の文字が。
阿佐海岸鉄道はJR牟岐線の末端という立地、沿線人口の少なさや路線距離の短さもあり、
旅客収入が伸び悩んでいるのが現状です。
「阿佐海岸鉄道?うーん、四国旅行は考えてるけど、そっちはちょっと遠いからまた今度で・・・」
と考えている方、阿佐海岸鉄道は今が旬!
NHKの朝の連続テレビ小説「ウェルかめ」の舞台である日和佐から、
こちらもNHKの大河ドラマ「竜馬伝」、坂本竜馬の出身地である土佐へは、
JR牟岐線から阿佐海岸鉄道を経て、高知東部交通および土佐電ドリームサービスの路線バスで
室戸岬を周り、土佐くろしお鉄道で向かうのが、景色も良くてオススメなんです。
そして私がいま気になっているのは、1月17日~2月28日の日曜日と2月11日(祝)
にかけての8日間運行される「なごみ列車」。
速度を落として車窓が更に堪能できる車内で、
セルフサービスのコーヒーやお茶をいただきながら、
まったりとした時間を過ごすことができる、スローライフな列車です。
JR四国内のみどりの窓口やワープ各支店で購入できる「徳島・室戸・高知きっぷ」
(徳島→高知・高知→徳島共に5500円・土讃線、徳島線、高徳線経由の付属きっぷ2600円もあり)
を利用すれば、重複乗車や逆利用にならない限り乗降自由で、
牟岐線では特急列車の自由席にも乗車可能です。
ロケ地巡りや沿線観光、和みまでバッチリの「徳島・室戸・高知きっぷ」を使って、
阿佐海岸鉄道に"みなでのらんけ!"
鉄道アーティスト 小倉沙耶レポート
小倉沙耶のやわやわ日和 http://kokurasaya.blog111.fc2.com/