#464「回転」

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 仕事が終わったあと、支局の近くを同業他社の仲間とジョギングしました。時刻は完全に夜ですが、サマータイムのおかげでまだ明るいので、時間は有効に使えます。トコトコ走って、ワシントン中心部、「モール」と呼ばれるぶち抜きの公園の中を連邦議会に向かって抜けて行くと、懐かしい遊具が見えてきます。メリーゴーラウンドです。

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 クラシックな、昔ながらの、という形容がぴったりなこの遊具。懐かしいですね。しかし最後に乗ったのはいつでしたか...。この日はもう営業を終わったあとでしたが、日中は大勢の子どもたちでにぎわいます。穏やかで、ささやかな、平和な日常、といえる光景でしょう。

 しかし、このメリーゴーラウンド、アメリカの社会史と密接なかかわりのあるメリーゴーラウンドなのです。「ワシントン・ポスト」の記事によると、1940年代に作られたというこのメリーゴーラウンド、かつてはメリーランド州の遊園地にありました。当時そこは他の多くの遊園地と同様に白人専用でした。乗ることはもちろん、入ることも出来ない遊園地。社会のあらゆる場面に厳然と存在した人種差別に立ち上がった人たちの粘り強い活動により、ようやくあらゆる人々に門戸が開かれたのは、つい50年ちょっと前のことです。

 子どもたちの無邪気な声とは対極にある差別の歴史。このメリーゴーラウンドは、首都のど真ん中で、そうした時代といまを結びつけながら、きょうもぐるぐると回っています。人種をめぐる事件がなお後を絶たず、この問題が過去のものとなっていないアメリカで、私もさまざまなことに考えをめぐらせます。

2016年8月

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プロフィール

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近野 宏明
(こんの ひろあき)

現在、ワシントン特派員。鉄道、自動車、航空機などの乗りもの・交通全般に詳しい。

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このブログ記事について

このページは、近野 宏明(こんの ひろあき)が2015年7月21日 11:39に書いたブログ記事です。

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