#392 「実物」
本稿で取り上げた乗りものの中で、最も遠くまで行ったのはこちらではないかと思いますが、如何でしょう。...と書いている私の記憶も定かではないんですけど。
ワシントン郊外、日本からの直行便が到着するダレス空港近くにある、航空宇宙博物館の別館にその実物が展示されています。間近で見るスペースシャトル・ディスカバリー。目の当たりにしての印象は、①けっこう大きい(とくに垂直尾翼が)、②かなりくたびれている、という2点です。
とくに②については、機体表面の様子から強く感じられます。皆さまご存じの通り、大気圏から外に出て、また戻ってくる際に機体は凄まじい熱に晒されます。その熱を遮断するために、無数の耐熱タイルが貼ってあるのですが、これがけっこう痛んでいるのです。遠目に見るとツルッと滑らかに見える機体が、不均一にデコボコしています。いかに過酷な環境を行き来してきたか、ということを、ひと目でさとらせます。さらに、窓枠や扉の継ぎ目もけっこう凹凸があって、随所に「古さ」を感じるんですね。プラスチックの模型とは全く異なります。考えてみれば基本設計は1970年代のものゆえ、当然かもしれません。もちろん、機能はバージョンアップしているのでしょうが、決して「最新の」とは言い難いかと。考えようによっては、よく30年も運用してきたなあと思います。
...と、遙かなところに行ってきた実物を目のあたりにすると、人間の叡智と、その道のりでの犠牲や、宇宙の深遠さなど、あれこれ思いを巡らせずにはいられません。ワシントンにお越しのさいには是非、一見をおすすめします。