#198「冷凍」
冷凍させただけでこれだけ価値の上がるもの、他に思いつくでしょうか?「冷凍みかん」。確かにスーパーの冷凍食品コーナーに行くと、最近は「冷凍ラズベリー」とか「冷凍いちご」「冷凍マンゴー」などがカチカチ状態で並んでいます。
しかし冷凍みかんの特徴のひとつは、冷凍前後における有り難みの急騰、ではないでしょうか。マンゴーやラズベリーなどは最初から「よそゆき感」「セレブ感」のある果物ですもん。普通のみかんはひと箱いくらで買ってきて、台所の隅やひんやりした納戸あたりにどーんと置いておく。もちろん高級品もあるのでしょうが、きわめて庶民的な果物ですよね。
ところが。旅先の売店の冷凍庫で冷凍みかんをみかけたとき、胸のときめきは大きくなります。ボックスシートに座って小さなテーブルの上で皮を剥き、シャリッとした味わいを楽しむ…。味だけではない魅力をその袋の中に秘めているから、胸が高鳴るのでしょうね。言葉にすると「旅情」。旅情のぶんだけ冷凍みかんの有り難みは上乗せされているのです。その証拠に、通販で買って家で食べても、なんだか物足りない気がするのです。乗りもの好きの私としては。
しかしかつての冷凍みかんは確か5個で250円だったような。あるいは5個200円という時代もあったような。今回食べたものは4個で400円でして、ああ昭和は遠くになりにけり、という感は強まるばかりであります。