#369「移動」
さらに京都シリーズは続きます。市内をバスで移動していたときのこと。車窓をぼんやりと眺めていると、それは突然視界に飛び込んできました。
目を引く黄色いカバーで覆われた何か。よく目を凝らすと、一本足のそれは、バス停のようです。ちなみに私の視力は2.0。大体のものはよく見えるんです。そのカバーに記された文字に驚きました。「只今移動中」。
これは・・・文字通りに解釈してみましょう。この場所にもともとあったバス停は、ただいま「移動中」だそうです。ただいま、ですよ。いままさに、バス停を担いで別の場所に持っていっている最中、ということになります。
でも実物はここにあるので、「概念としてのバス停」を移動しているんでしょう。現在進行形となると、このバス停を使おうとする人はどうすればいいんでしょう。 そしてこのバス停に止まるはずのバスは・・・?
ああ深まる謎。いま乗っているバスを降りて、「只今移動中」のカバーを見に行けば、その答えは書いてある気がしますが。急ぎの移動でしたので涙を呑んで謎を置き去りにしてきました。無念。