第15話 飯田橋駅
駅の思い出
第15話 飯田橋駅 駅の思い出
- [投稿日:2007年4月27日]
横山三四郎様 東京都杉並区 元新聞記者
わたくしは以前、千代田区に住んだことがあります。住所は千代田区飯田橋4-10-1-16××。もとはお堀だったので、江戸城内も同然のところでした。
1980年代の初め、わたくしがまだ現役記者のころのことです。飯田橋界隈を歩いていてお堀を埋め立てている工事を目にしました。「なんということか、自
然の景観を大切にしなければならないこの時代に、歴史としても貴重なお堀を埋め立ててしまうとは! これは許せない!」と強く感じました。
商売根性で記事にしようと調べてみたところ、もはや手遅れでした。
東京都が事業決定し、住宅供給公社が飯田橋駅周辺の再開発事業としてどんどん工事を進めていたのです(どぶ川さながらの臭いお堀をなんとかしたいという狙
いもあったらしいのですが...)。「セントラルプラザ」という名称で建設予定の16階建て住宅棟マンションでは、居住者の募集までがすでに始まっていまし
た。
「ウーム、残念」と悔しがったついでに、ふと応募してみようかという気になりました。手元に取材のときにもらった応募のパンフレットがあったせいもありま
した。当時、都内には高層マンションなどほとんどなかった時代でしたから、とくに上階の高いところの3LDKなどは5,000万円近い価格にもかかわら
ず、希望者が殺到して数百倍もの倍率だというのです。だから、「当たるはずなどないのだから...」と、宝くじ気分で最上階の部屋を申し込んでみることにした
のです。
しばらくして、そんなことも忘れていたころに、一通の手紙が届きました。なんと、例の最上階16階の部屋が当たったという知らせが来たのです。
「さて、どうしよう。駆け出し記者の身に、そんな大金があるわけがない。田舎の親も子どもらの教育資金に使い果たしてすっからかんだし...」と困り果てまし
た。その部屋に当選した何人かの人も、頭金が調達できずに辞退して、わたくしに番が回ってきたようでした。住宅供給公社からは、「あなたもどうせダメで
しょうから早く見切りをつけて辞退してください」なんて言われました(笑)。
でも、「手を尽くすだけは尽くしてみよう」と思い、長男の誕生を機に三鷹に買っていた木造二階建ての中古住宅の売り出しに奔走しました。それで知った世の
中の鉄則は―結婚相手でも家でも、買い手は近所にしかいないということ。なんと、極々近所から、看板を見て買いたいという方が現れたのです!
さて、こうしてなんとか頭金を調達することができて、JR飯田橋駅のホームの真上にそびえる「セントラルプラザ」最上階の3LDKに入居しました。外は大
雨が降っていようとも傘なしでぬれないまま大手町の会社に出勤できるところです。大手町駅までは東西線でたったの5、6分。とても便利で、非常に快適でし
た。
でも、便利でいいなと喜んでいたのはつかの間、バリバリと仕事をして、さて帰ろうと地下鉄に乗ると、まっすぐ自宅に帰る気にならないのです! 原稿書きで
頭の芯が疲れていて、なかなか帰宅モードにならない。飯田橋の自宅の前を通り過ぎて、新宿あたりへ、あるいは神楽坂を登って、ついつい一軒...となってしま
う(笑)。自宅と会社が近すぎるというのも考えものだなんて思ったりしました。
そうこうするうちに、東京は不動産バブルの時代を迎えます。 稀少な都心の高層マンション「セントラルプラザ」はバブルの象徴になり価格はどんどん高騰して、3LDKが2億を越えたのです! それでも買いたいという不動産屋が来ました。
「さて、どうしたらいいものか」などと思案しているうちに、ロンドン特派の社命が来てしまいました。
その留守の間にバブルは崩壊して元の値段に戻ってしまい、結局、バブルの恩恵にはあずかれないでしまった...(笑)。その後、飯田橋から杉並区に移り住むこ
とになりましたが、とにかく非常に便利な駅だという印象が残っていますね。
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