第07話 札幌駅
駅の証人に聴く
鉄道旅行の楽しみといえば駅弁。今では、販売ブースで買い求めるのがふつうになりましたが、一昔前までは、駅弁の立ち売りが行われていました。
肩から提げた木製の箱に、駅弁をたくさん入れて、ホームで声を嗄らす売り子さん。今ではしだいにそういう風景を見ることができなくなりましたが、
昔の思い出として懐かしく思う方も少なくないのではないでしょうか。
今回、お話を伺った鹿野茂雄さん(69)は、駅弁立ち売り30年以上という大ベテラン。札幌駅の売り子さんとして、数多くの列車を迎え、
お客さんにお弁当を売ってきました。北海道を旅行された方の中には、鹿野さんからお弁当を買った方もいるかもしれませんね。
札幌駅立売商会に入社したのは昭和40年4月4日、27歳の時でした。ずっと駅で、いわゆる立売をやってきました。
この仕事は先輩から親切に教えられることもありませんので、見よう見まねで覚えていきました。
指示されることもありませんので、雰囲気を見ながら、自分で判断していくんですね。最初は、足が太ってしまい、慣れるまで1週間くらいかかりました。
ただ、声はかれませんでしたね。腰も大丈夫でした。
夏休みになると、すごいお客さんが来ますから、そういう時は、全員で18名いる売り子がそれぞれ交代でホームで販売しましたね。
当時の札幌駅は0番線から7番線までありました。いちばん売れたのはやはりお昼時です。
今はほとんど札幌が起点になっていますが、当時は、網走や稚内から函館に向かう列車――「宗谷」や「おおぞら」といった列車がありました。
これらの列車が札幌に到着する時が書き入れ時です。一列車できれいに売れました。100本ではききませんでしたね。1日200本くらい売れる時もありました。
あと、売れるのはやはりお正月ですね。
平成に入ってから種類が多くなりましたが、当時、(お弁当は)まだ3種類しかありませんでした。幕の内弁当が150円、お寿司が80円、
シャケ飯が100円でした。幕の内がいちばん売れていました。冬は立ち食いそばも賑わっていましたね。
販売箱には40個入ります。けっこう重たいので、たくさん積めません。積むお弁当は、来る列車にあわせて弁当場に頼んで作ってもらいます。
「幕の内をいくつ、寿司をいくつ」というふうに、自分で売れるなあという数を頼む。ふだんはそれなりに、繁忙期には多く頼みます。
ホームでは、販売箱を肩から吊して「お弁当~ お寿司~ シャケ飯~~」と呼び声を出すのです。
自由席の方がお客さんがたくさん乗っているので、そちらに人を割くことが多かったですね。繁忙期には、10両編成になって、
自由席1両に2、3人売り子がついたものでした。先輩を立てて、新入りは指定席に回っていましたね。このあたりは、阿吽の呼吸でした(笑)。
朝は7時から8時、夕方は5時頃から7時半くらいまでが忙しかったですね。
当時は、北6条西5丁目の寮に住んでいて、朝は5時半に起きて、6時半には出社しました。そして、お弁当を持って線路を横断してホームに。
朝のピークが終えた9時、10時くらいに一息つく。そして、11時半頃から1時のお昼時のピークを迎えます。その後、お昼ご飯を交代で取って、夕方のピークに。
室蘭行きの急行に乗るお客さんが晩ご飯を兼ねてお弁当を買うんですね。8時頃終えて、事務所で売上の計算。
歩合がありまして、総売上の4分5厘でしたね。釣り銭を多くやってしまったりなんてこともありました(笑)。
今の汽車は窓が開かなくなりましたが、当時は窓を開けてお弁当を買いました。窓を開けて買う光景は思い出に残っていますね。
でも、冬になるとしばれて開かないんですよ。そういう時は、デッキに出てきていただいて売っていました。
また、マイナス10度にもなりますから、保温のために工夫しました。お弁当の大きさにあわせてビニールを弁当1本ずつ包んだのです。
混雑するお正月には、デッキで売り子2人が交互に売っていたこともありました。10分くらい停車するのですが、それでも買いそびれるお客さんもいました。
次の苫小牧までお弁当を買えませんからたいへんです。
昭和55年頃に、今の販売車に切り替えられ、人数も8人くらいになりました。汽車の窓も開かなくなりましたから、
販売箱よりも販売車の方にという流れになったんですね。
聴き手、まとめ:NPO「昭和の記憶」
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