第15話 飯田橋駅
駅の証人に聴く
中村邦夫さんは昭和11年9月2日生まれ。昭和40年、飯田橋で「神田事務用品」を開業されました。飯田橋商店街振興組合の創業メンバーで、現在は代表理
事として地域の人々と共に、飯田橋商店街の活性化のため、様々な取り組みをされています。お店を始められてから今年で42年目。飯田橋の街をこよなく愛す
る中村さんに、駅前の移り変わりの様子について伺いました。
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お生まれは?
中村:東京都文京区後楽町で生まれました。飯田橋の近くね。しばらくして埼玉に移り、学生時代にはまた東京に戻ったんだけど、卒業してから今度は福島に行って働
いていました。でもなぜか飯田橋には縁があったみたいで、昭和40年に飯田橋に戻ってきた。そこで今の店を開いてから、ずっと飯田橋だね。
当時は店の前を都電が走っていましたね。今のJR飯田橋駅の近くに都電の駅があってね。早稲田まで一直線。早稲田や神保町まで、よく都電に乗って行きまし
たよ。おもしろいのがね、道の幅は都電が走っていたころと全く変わらないところ。道の中央に都電が走っていて、その両脇に車が走っていたんだよ。ただ、交
通渋滞がひどくてね。なかなか時間通りに走らない。車社会の波も押し寄せてきて、結局都電が廃止になっちゃったんだよね。当時は私も車の方がいいと思って
いました。都電は邪魔だってね。今思うと都電は懐かしいですけどね。
駅前の歩道橋ができたのは、ちょうど東京オリンピック開催のころだったかな。いつの間にかできていたね。当時は車が優先だったから、車の邪魔にならないように、歩道橋を作って人を上に登らせようって考えだったんだね。今は車より人が優先。時代の流れは変わるもんだね。
駅前にラムラってビルがあるでしょう?あそこはね、当時はお堀だったんですよ。飯田堀っていってね。私が40代のころだったかな、それが開発されるってい
うんで、飯田堀を守る会っていうのを立ち上げて、地域住民と一体となって反対運動をしました。けっこう盛り上がりましたよ。
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当時、飯田町駅というのがあったそうですが。
中村:甲武鉄道飯田町駅ね。今のJR貨物があるところから貨物列車が走っていました。飯田橋は印刷、製本の街だったんですよ。紙の流通基地。この貨物列車で製紙
を日本全国に運んでいたんだね。今のJR飯田橋駅には何本も路線が走っているでしょう? あのうちの1本はこの貨物列車用の路線だったんですよ。牛込御門
のそばにあった終点の駅が、JR飯田橋駅に統合されてね。そうそう、当時は「飯田橋」なんて名前はなかった。町の名前も全部「飯田町1丁目、2丁目...」っ
てね。出版社も今よりたくさんありましたよ。でも、印刷や製本っていうのは、場所を取るし公害にもつながるんだよね。この辺は場所が狭いからみんな郊外に
移ってしまった。
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中村さんにとって、飯田橋のいいところは?
中村:昔から飯田橋は下町庶民の街。みんな人が良くてね。それが飯田橋のいいところかな。バブルのころは、街全体が活気付いていて良かったね。店にもとにかくだ
まっててもお客がじゃんじゃん入ってきたね。そのころは通販なんてないでしょう。会社の人たちがたくさん買いにきました。当時は、2割引きセールだとか在
庫処分セールをやったら、どんどんお客が来て大繁盛だった。あのころは本当によかったですねぇ。今じゃ2割引き、3割引きなんて当たり前だからね。
でも、バブルの影響で土地が高くなって、周りのお店はずいぶんなくなっちゃいましたよ。店をたたんで外に出て行ってしまってね。個人商売が難しくなってし
まってね。外食屋ももっとたくさんあったんだよ。おじさんやおばさんが個人経営でやってる泥臭くていい店がね。朝食や昼食にはよく食べに行っていました。
でも、バブル時代には、そんなお店もどんどんなくなっちゃってしまいましたね。
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いつごろから商店街の活動を始められたのですか?
中村:飯田橋の街をにぎやかにしたいという思いから、昭和63年頃に飯田橋商店街振興組合を立ち上げました。立ち上げた当初、商店街で福引大売出しイベントなん
かをやりましたね。大盛況でした。商店街は繁盛するのが最大の目的とよく言われるけれど、私がいつも言っているのは、いくら個々の店が良くても、街全体が
良くならないとだめだということ。街が良くなれば、店の繁盛にもつながるからね。
イベントは一昨年ぐらいまでやっていたんだけど、イベントにたくさんのお金を使っても、結局その場限りで終わってしまう。最近は、こういうイベントより
も、本当に人々が街の集まるために必要なことにお金を使っていきたい。今、携帯がすごく流行っているでしょう? やっぱり若い人に親しんでもらえる街にし
ていかないといけない。これからの課題は、PASMO(パスモ)やSUICA(スイカ)が使えるような商店街にしていきたいですね。
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